元ロシア代表でゼニトやアーセナルなどで活躍したアンドレイ・アルシャビン【写真:Getty Images】
読者の皆さんは、2000年台後半にアーセナルで活躍したアンドレイ・アルシャビンを覚えているだろうか。アルシャビンは、ロシア代表のアタッカーで、母国のゼニト・サンクトペテルブルクで頭角を現す。すると2008年に開催された欧州選手権で、母国をベスト4に導くなど、まず代表で明確な結果を残した。
その後はビッグクラブが争奪戦を繰り広げる中、童顔の貴公子は2008/09シーズンの冬にアーセナル移籍を選択。ロンドンで5シーズンを過ごした後はロシアのクラブを渡り歩くと、カザフスタンリーグのカイラトに所属した昨季に現役引退を表明した。
そんなアルシャビンのアーセナル時代の活躍が再び話題になっている。きっかけはアーセナル公式Twitterが動画で投稿した“伝説の4得点”だ。アルシャビンがゼニトからアーセナルに加入して2カ月後に行われたアンフィールドでのリバプール戦である。
敵地での一戦は2位リバプールが声援に押されて押し込む流れに。フェルナンド・トーレスを中心に決定機を作るが、アーセナルはGKルカシュ・ファビアンスキの好セーブもあり瀬戸際で止め続ける。
すると流れに反して先制したのはガナーズだった。35分にセスク・ファブレガスの折り返しをアルシャビンが冷静に沈める。前半は1-0でアーセナルがリードした。
しかし優勝に向けて負けられないリバプールは後半に反撃に出る。49分にトーレスがヘディングを決めると56分にはイスラエル代表ヨッシ・ベナユンがゴール。後半開始早々にホームチームが逆転した。
アーセナルにとって悪い流れとなったが、窮地を救ったのがアルシャビンだ。66分に左の高い位置でボールを奪うとカットインから強烈なシュートを突き刺す。さらに3分後には相手のクリアミスをボックス内で拾うと逆転弾を決め込んだ。
しかし試合はこれで終わらない。72分にトーレスが3人を振り切って同点ゴール。リバプールがしぶとさを見せる。ただ、この日の主役はアルシャビンだった。
90分、アーセナルのテオ・ウォルコットがカウンターで抜け出すとロシア代表にラストパス。1対1を迎えたアルシャビンは冷静にGKのニアを突いた。アルシャビンはふてぶてしく指で“4”と表して喜びを爆発させた。
結局2分後にリバプールのベナユンが得点を挙げて試合は4-4で終了するのだが、結果以上に人々の印象に残ったのはアルシャビンのパフォーマンスだろう。イングランドのリーグ戦においてアンフィールドで一人の選手が4得点を決めたのは1960年以来だ。ロシアの貴公子が披露した活躍は未だにファンの記憶に残っている。
(文:内藤秀明)