田中碧が経験する初のA代表
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EAFF E-1サッカー選手権は11日までに第1節が終了。日本と韓国がそれぞれ1勝と好スタートを切った。今後の展開にもよるが、18日の日韓戦はタイトルを賭けた大一番になりそうだ。そこにピークを持って行くためにも、日本は14日の次戦・香港戦も確実に勝って、チーム完成度を最大限引き上げた状態で最終決戦を迎えたいところだ。
2-1で勝利した10日の中国戦翌日、森保ジャパンは23人全員揃ってトレーニングを行った。森保一監督は普段より長い5分程度の青空ミーティングを実施。中国戦の課題を伝えると同時に、チームの士気を今一度高めた。その後、前日のスタメン11人はランニングや軽いパス交換などでクールダウンに努め、残る12人は3対3や5対5、6対6のゲーム形式などを約1時間の精力的にこなした。
このうち、特に動きのよさを印象づけたのが、今季Jリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞した田中碧。中国戦は出番なしに終わったが、橋本拳人と井手口陽介のボランチコンビの動きに注目。「ボールの動かし方だったり、相手をどう動かすか、自分たちがどうボールを握るか、守備面で前からどう守るかを見つつ、相手のフォーメーションと照らし合わせながら見た」と本人も言うように、多くの発見があったという。21歳の若きボランチにしてみれば、それをA代表の国際試合の場でどうフィードバックしていくかが肝心だ。
川崎コンビへ注目
中3日という強行日程を踏まえると、次戦はメンバーをガラリと入れ替える可能性が高い。ボランチでは、田中碧と大島僚太の川崎フロンターレ組が先発する可能性が高いだろう。
もともと森保監督もA代表デビューとなる田中碧の心理的重圧を軽減させるために、経験豊富な大島と揃って出すプランを描いていたのかもしれない。「僚太君は自分のことを分かっている選手。一緒に出られたらいつも通りやれると思う」と田中碧も前向きに言うだけに、新たなボランチコンビの攻守両面のかじ取りが注目される。
4-5-1の基本布陣を採る香港は時折、6バックになって韓国相手に徹底した守りを披露。11日のゲームは0-2で敗れはしたものの、善戦を見せていた。日本戦でも同じような超守備的戦術で挑んでくると見られるだけに、ボランチのパスワークと展開力が攻略の重要なカギになる。
そのあたりは日頃からポゼッションサッカーを突き詰めている川崎の2人にとってはお手の物。リズムの変化や緩急をつけながら揺さぶることができれば、必ず穴を突くことができるはずだ。
U-22日本代表のボランチ事情
ラストの日韓戦は橋本、井手口を含めたボランチ4枚の中から、計算できる組み合わせが選ばれることになりそうだ。すでに森保ジャパン定着を果たしている橋本は中国戦で評価を上げているし、2大会連続でE-1に出場している井手口も今夏のJリーグ復帰時に比べると明らかにキレと鋭さ、ボール奪取力を高めている。
今回のメンバーの中で唯一の2018年ロシアワールドカップにも参加した大島も違いを作れる選手。その3人の間に2020年東京五輪世代の若手である田中碧が割って入るのはかなりハードルが高い。しかしながら、U-22世代のボランチの手薄感を考えると、この大会で彼がインパクトを残し、突き抜けるきっかけをつかむことが重要になってくる。
U-22代表のボランチ陣は、今年に入ってから中山雄太や高宇洋、松本泰志、田中駿汰らが試されているが、絶対的存在と言い切れる者はいない。6月のコパ・アメリカ(南米選手権)に参戦した中山もやや伸び悩んでいる印象で、11月のU-22コロンビア戦ではチームをコントロールしきれなかった。
それゆえ、柴崎岳や遠藤航らのオーバーエージを抜擢すべきという声があがっている。「東京五輪を本気で目指す」と宣言している本田圭佑にもチャンスが出てきたと言われるほど、U-22日本代表のボランチは台所事情が苦しいと言わざるを得ない。
顕著になる「柴崎依存症」、田中碧への高まる期待
だからこそ、田中碧への期待は高まってくる。本人は「このE-1でアピールしてA代表に生き残るという意識はない」と謙虚な姿勢を貫きつつも、「東アジアの国際舞台でどこまで自分が通用するかを早く試したい。やってみないと分からないところがあるんで」と意欲を燃やしている。
目先の香港という相手は、彼が今年2度対峙し、大きな手ごたえをつかんだU-22ブラジル代表とは特徴の異なるチーム。だが、タフな球際や寄せ、当たりなどでその経験値を十分生かせるだろう。同時に、香港の強固なブロックをこじ開けるための工夫やアイディアも求められてくる。そういったプレーを表現できれば、今後の飛躍への布石を打てるはずだ。
森保体制スタートから1年半。日本のボランチは柴崎依存症が顕著になっている。かつては遠藤保仁や長谷部誠に依存する時代が長く続いたが、1人のプレーヤーに役割が集中するような状況は決して芳しいものではない。今大会の参戦しているボランチ陣はその現状を変えるべく、存在感とリーダーシップを強烈に示さないといけない。
20歳そこそこの若い田中碧ももちろんその2人。A代表定着を目指してガムシャラさと泥臭さを強く押し出すような一挙手一投足をぜひ見せてほしいものである。
(取材・文:元川悦子【韓国】)
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