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インテル、屈辱的敗戦の原因は? “1.5軍”のバルセロナに力負け、そこに見られた実力の差【欧州CL】

チャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグF組第6節、インテル対バルセロナが現地時間10日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利を収めている。インテルはこの結果を受けグループリーグ敗退。多くの決定機を作ったが、それを生かし切ることができなかった。2トップは強力だったが、課題はどこにあるのか。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

インテルが迎えた大一番

インテル
インテルはホームでバルセロナに1-2で敗北【写真:Getty Images】

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「全員にとって大事な試合だ。このクラブの環境、選手、そして私にとってもね」

 クラブ公式サイトによると、インテルを率いるアントニオ・コンテ監督はチャンピオンズリーグ(CL)・グループリーグ第6節のバルセロナ戦の前日会見でこのように話していたという。その闘将の言葉通り、ネラッズーリにとってこの一戦はクラブの運命を占う重要なものとなった。

 グループリーグ5試合終えたインテルの成績は、2勝1分1敗の勝ち点7。ボルシア・ドルトムントとは勝ち点で並んでいたが、当該チーム間での成績で上回っていたインテルが2位につけていた。よって、同クラブは最終節のバルセロナ戦で勝利すれば決勝トーナメント行きが確定。引き分け以下に終わった場合はドルトムントの結果次第で運命が決まることになった。

 ただ、ドルトムントは最終節の相手がグループ最下位のスラヴィア・プラハ。さらにホームでの一戦ということで、勝ち点3を取りこぼす可能性は低かったと言える。そのため、インテルがバルセロナ戦で勝ち点3を奪うことは必須。ドイツからの結果を待つことなく、グループ突破を決めることが求められた。

 そんな重要な一戦でインテルはほぼベストメンバーをピッチへ送り出した。好調を維持するFWラウタロ・マルティネスにFWロメル・ルカク、3バックもお馴染みの3人が名を連ねた。また、MFステファノ・センシやMFニコロ・バレッラら負傷者が続出している中盤にはMFボルハ・バレーロとMFマティアス・ベシーノが先発入りを果たした。

 一方、最終節を待たずしてグループ首位通過を決めたバルセロナはFWリオネル・メッシやFWルイス・スアレスら複数の主力選手を温存。MFカルレス・アレニャ、FWカルレス・ペレスといった若手選手が多く先発入りしていた。

 試合は立ち上がりからバルセロナペースで進む。選手間の距離をコンパクトに保ちながらテンポの良いパス回しでミドルサードを支配。この日のバルセロナは3バックを採用したが、WBも基本的に高い位置を取り、前に人数を集めて攻略を図っていた。

 一方でインテルはボールを奪ったら素早く縦につける。全体でラインの押し上げを素早く行うことで、相手に余裕を与えない。とくにルカクにボールが収まると攻撃のテンポは一気に加速し、相手の陣形が整う前にゴール前へ侵入。ベルギー人FWのパワフルなプレーには、さすがのバルセロナ守備陣も苦労していた。

 このように、お互いがお互いに特徴を発揮した立ち上がり。その中で先制に成功したのはアウェイ・バルセロナであった。23分、FWアントワーヌ・グリーズマンが斜めに鋭いパスを送ると、ボールはボックス内にいたMFアルトゥーロ・ビダルの下へ。これはDFディエゴ・ゴディンがなんとか足先で弾いたが、こぼれ球をC・ペレスがプッシュ。GKサミール・ハンダノヴィッチにとってはノーチャンスであった。

躍動するエース

ラウタロ・マルティネス
躍動していたFWラウタロ・マルティネス【写真:Getty Images】

 決勝トーナメント進出に向けて勝利が絶対条件という中での失点。インテルにとっては痛すぎる一撃となった。そこまでの流れ自体も決して悪くなかったのでなおさらだ。

 しかし、当然ながらインテルはここで終わらない。同点に追いつこうと、さらにギアを上げバルセロナに襲い掛かった。

 ただ、その勢いの中にどこか焦りのようなものも感じられた。ボールを奪って縦に、というのは今季のインテルの特徴でもあるが、どうにもここのパスがズレる。速さを求めるがゆえに、正確さが少し失われていた印象だ。当然、こうなるとバルセロナにボールが渡る回数も増える。ただ、インテルも無理には奪いに行けない。ホームチームは完全に後手を踏んでいた。

 それでも、インテルには唯一の希望があった。L・マルティネスだ。

 インテルは基本的に最終ラインからのビルドアップを行うが、詰まった際には後ろに下げるのではなく、前線に長いボールを送り込むことが多い。そうなるとボールは相手のDFに弾かれやすくなるのだが、この日のアルゼンチン人FWにはそうしたボールが面白い様に収まる。そうなれば、チャンスは必然的にインテルへ転がる。ここが、ホームチームが見せたポジティブな面であった。

 先制される前の18分にもL・マルティネスがロングボールを収め、DFクリスティアーノ・ビラーギの決定機を生み出している。このあたりはDFサミュエル・ウンティティやDFクレマン・ラングレといった経験豊富な選手でも苦戦していた。

 L・マルティネスは身長174cmと決して大柄なタイプではないが、とにかく空間認知力に優れている。ボールがどのタイミングで、どの位置に落ちてくるのかを素早く判断できるので、浮いたボールを的確に収めることができる。また、身体の使い方も巧みで、相手に当てにいく、というよりは身体を相手の前に入れに行く。DFは浮いたボールを足で処理する際、バウンドを見極め一度動きをストップさせるが、背番号10はその瞬間にスッと前に入る。こうすることで相手はボールに触れることができなくなり、反対にL・マルティネスはボールを相手から離すことができる。ファウルももらいやすくなるのだ。

 そのL・マルティネスの働きが結果として表れたのが43分。DFダニーロ・ダンブロージオからのロングボールを収めた背番号10がDFジャン=クレア・トディボを背負いながらもボディバランスの良さを生かしキープ。そして後方から走り込んできたルカクへ落とすと、同選手がダイレクトでシュートを放つ。これが相手選手に当たってゴール右隅に突き刺さった。

 それまでインテルはほとんどチャンスらしいチャンスを作ることができていなかった。だからこそ、この1点は大きな意味を持つことになった。前半はこのまま1-1で終了。インテルは良い流れを掴んだまま、残り45分間を迎えることになった。

17歳の決勝弾に沈む

 後半は逆転を狙うインテルペースで試合が進んだ。ボールホルダーに対するアプローチは前半よりも素早くなった印象があり、全体で強度を高く保ちながらアウェイチームに対応した。

 一方バルセロナは前半と同じくボールを支配するものの、守備時は5バックになるインテルを前に使えるスペースが限られビルドアップの部分で苦戦。グリーズマンらも中盤に降りてボールに触れようとするものの、インテルは1人に対して複数人で囲んでボールを奪いにくるため、なかなか前に運べないといった状況が続いた。

 そして、バルセロナを襲うのはルカクとL・マルティネスの脅威。60分にはトディボに競り勝った背番号9がロングボールを収めると、GKネトと1対1に。71分にはL・マルティネスがラングレをシャペウでかわし、左足でシュート。しかし、幾度となくバルセロナのゴール前に侵入したが、いずれもゴールには結びつかなかった。

 いよいよグループリーグ突破に向けて後がなくなってきたインテルはMFヴァレンティノ・ラザーロ、MFマッテオ・ポリターノ、FWセバスティアーノ・エスポージトを入れるなど超攻撃的に出る。後ろ3枚を残し、残りの7人は全員が相手陣内深い位置まで侵入していた。

 しかし、途中出場の選手たちがうまく試合に入り切れなかった。さらにルカク、L・マルティネスの両者がバルセロナの選手複数人に囲まれ潰されるといったシーンも増えるようになるなど、攻撃陣がやや空回り。L・マルティネスが2度ゴールネットを揺らすものの、2度オフサイドにかかるなど、運にも見放された。

 そして終盤の86分、インテルは途中出場のFWアンス・ファティにゴールネットを揺らされ、土壇場で勝ち越しを許してしまった。この時点で、サン・シーロを後にするサポーターが多く見受けられるなど、この1点がインテルにとって何を意味するのかはもはや言うまでもなかった。

 試合はこのまま1-2で終了。他会場ではドルトムントがスラヴィア・プラハに2-1で勝利を収めたため、インテルの今季CLにおける冒険は幕を閉じた。

2トップは強力だが…

 データサイト『Sofa Score』によると、インテルはこの日、支配率36%としながらもシュート数18本、枠内シュート8本という数字を残した。ボックス内のシュート数に関しては9本と、バルセロナのゴールに近づいていたことは確かだ。

 しかし、守護神・ハンダノヴィッチが『Sky Sport』のインタビューで「僕たちは後半にゴールへ持ち込むことができなかった。攻めてチャンスを作ったし、全力を懸けた」と話す通り、インテルは多くのチャンスを生みながらもそれを結果に結びつけることができなかった。先日行われたセリエA第15節のローマ戦でも多くのチャンスを作りながら、最終的には0-0のスコアレスドローに終わっている。

 反対にバルセロナは途中出場のアンス・ファティが決勝ゴールを叩き出すなど、迎えたチャンスをしっかりとモノにしていた。このあたりの決定力の差が、この試合では出てしまった。勝ち方を知っているバルセロナの方が、単純な実力で上回っていたということだ。

 あとはやはり、インテル自慢の2トップは強力なのだが、周りの選手のサポートが不十分であった。ロングボールを収める能力は両者ともに非常に高く、そこからシュートまで持ち運べるのは魅力的であるが、単純なグラウンダーのパスを足元に収めた際、2列目の選手のカバーが少し間に合っていない印象が強い。ボールホルダーとそうでない選手の距離感が広いため、当然ながらパス回しはテンポよくいかない。こうなると、少しバルセロナの選手に余裕を与えてしまう。

 また、センシ、バレッラの両者が不在だった影響がないとは言い切れない。彼らの運動量やゴール前での飛び出しやアイデアの質などはやはり高い。バレロやベシーノにもそれぞれ特徴はあるが、やはり今のインテルにはアッズーリの2選手が中盤に必要不可欠であるということが改めてわかった。いない選手のことをどうこう言っても仕方がないが、インテルにとってここも痛手であったと言える。

 主力を温存した1.5軍のバルセロナにホームで敗れたのは屈辱的。セリエAで首位を走るクラブなのであれば、なおさらだ。しかし、シーズンはまだまだ続く。CL敗退のショックを引きずらず、インテルがどこまで調子を上げていくか注目だ。

(文:小澤祐作)

【了】

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