半数以上が五輪世代となった日本代表
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韓国の釜山で行われるEAFF E-1サッカー選手権に挑む男子の日本代表メンバーは正直、驚きの人選だった。一部の選手が東京五輪世代のU-22から入ることは事前の情報を得てはいたが、過半数となる12人が選ばれたのだ。
そのうち6月のキリンチャレンジカップで初招集され、コパ・アメリカに参戦していたGK大迫敬介、同じくコパ・アメリカに選ばれたFW上田綺世、GK小島亨介をのぞく9人がA代表に初選出。
U-22以外の初選出はJ1優勝に王手をかけている横浜F・マリノスのMF仲川輝人だけ。A代表に続いて発表された28日のU-22ジャマイカ戦のメンバーと合わせ、この時期に招集できる東京五輪世代を一気に招集した格好だ。
日本代表に選出されたU-22世代の選手
GK
小島亨介(大分トリニータ)
大迫敬介(サンフレッチェ広島)
DF
渡辺剛(FC東京)
古賀太陽(柏レイソル)
MF
田中駿汰(大阪体育大学)
遠藤渓太(横浜F・マリノス)
森島司(サンフレッチェ広島)
相馬勇紀(鹿島アントラーズ)
田中碧(川崎フロンターレ)
FW
田川亨介(FC東京)
上田綺世(鹿島アントラーズ)
小川航基(水戸ホーリーホック)
招集をめぐる複雑な事情
本来、E-1には23人がエントリーできるが、現時点で発表されたのは22人。最後の1人はJ1の最終節を残し、J2のJ1参入プレーオフ勝者と12月14日に行われる入れ替え戦に回る16位になる可能性のある浦和レッズ、名古屋グランパス、清水エスパルス、サガン鳥栖、湘南ベルマーレの5クラブで残留を確定させたクラブから招集されると予想できる。
これら5クラブにはU-22代表の常連メンバーも複数いるため、結局は彼らの1人がE-1選手権に、残る数人がU-22ジャマイカ戦に追加招集されることが想定できる。ただし、清水は12月21日に天皇杯の準決勝があるため、E-1選手権の対象からは外れ、決勝に進めなかった場合のみ28日のU-22ジャマイカ戦にエントリーする措置が取られるかもしれない。
何れにしても今回のE-1メンバーはU-22が過半数となった。そのうちの7人(※選出後に不参加となった選手を含む)は11月に広島で行われたU-22コロンビア戦にも招集されていた。しかし、日程的にE-1への参加が不可能なFW前田大然ら5人の欧州組はともかく、岩田智輝や菅大輝といったコパ・アメリカでA代表にも選出されたU-22代表の常連が、U-22ジャマイカ戦のメンバーに含まれる。そのため単純にE-1選手権が東京五輪世代の主力でU-22ジャマイカ戦が当落線と分けることもできない。
来年1月にはタイで行われるAFC U-23選手権も控えており、おそらくE-1に参加する12人にU-22ジャマイカ戦のメンバー、またチーム事情で今回招集できない有力選手を加えて大会に臨むと考えられる。森保監督は東京五輪で金メダルを目標に掲げており、そのためにA代表を利用しているとの見方もできるが、ゆくゆくはA代表の選手層につながる期待はあるだろう。
A代表に割って入るチャンス
森保一監督はA代表と東京五輪世代のチームを1つのラージグループと見ていることを語っているからだ。またA代表で本格的に組み込めていない3-4-2-1のシステムをここで採用する可能性は今回のメンバー構成からも十分に考えられる。これまでFWで招集されてきた鈴木武蔵がMFで選ばれているのは彼を3-4-2-1の2シャドーで起用するメッセージとも取れるのだ。その場合、このシステムに慣れ親しんだU-22代表の選手たちは逆に心強い存在となる。
E-1のメンバーに選ばれたメンバーは、3試合でのアピール次第で今後、東京五輪はもちろんA代表のフルメンバーに割って入るチャンスを得たとも言える。コパ・アメリカを経験している大迫敬介と上田綺世はもちろん、U-22代表の中心的な存在である渡辺剛と田中碧も有力候補だろう。
渡辺剛は最終節までJ1優勝の可能性を残すFC東京でセンターバックのレギュラーを張る選手だ。ボール奪取力に優れ、競り合いや空中戦で外国人FWにもほとんど負けることがない。さらに鋭いロンスパスやセットプレーの得点力など攻撃面での貢献度も高い。
田中碧は6月のトゥーロン国際で準優勝に大きく貢献し、10月に行われたアウェイのU-22ブラジル戦で2得点をあげて勝利の立役者となった。中盤でボールを奪う能力も捌く能力も高く、11月のU-22コロンビア戦で課題になった展開力をもたらせる存在でもある。川崎フロンターレでボランチのコンビを組む大島僚太とセットで起用されれば、さらに持ち味を発揮しやすいだろう。
可能性を秘めたU-22世代の選手たち
サンフレッチェ広島で攻撃の中心を担う森島司もE-1で大きく飛躍する可能性がある。特に3-4-2-1で2シャドーの一角として起用されれば、いきなりインパクトを残すポテンシャルを備えている。また今回のメンバーにはCKやFKのキッカーを所属クラブで務めている選手が少なく、森島が試合に出ている時はおそらくキッカーを任されることになる。短期決戦のE-1では、セットプレーの得点が大きく勝敗を分ける要素となる可能性が高く、重要な働きができれば、東京五輪はもちろんA代表へのアピールにもなる。
遠藤渓太も横浜F・マリノスでは途中出場が多いものの、多彩なコンビネーションの中で鋭い仕掛けや正確なクロスなど確かな存在感を見せており、左サイドのスペシャリストが同世代の相馬勇紀しかいないため、スタメンで起用されるチャンスは十二分にありそうだ。
柏レイソルのJ2優勝に左サイドバックの主力として大きく貢献した古賀太陽、ジュビロ磐田から期限付き移籍したJ2の水戸ホーリーホックで7得点を記録した小川航基、名古屋グランパスから鹿島アントラーズで挑戦中の相馬勇紀も、ここをきっかけに大きく成長することを期待したい。
(文:河治良幸)
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