明暗を分けた「監督の力」。逆転直後の激走は“最後の策”を授けるため
監督の勝利。チェルシーが、1stレグ(1-3)で奪ったアウェーゴールによってCLベスト4進出を果たした2ndレグ(2-0)は、ジョゼ・モウリーニョがPSGから奪った勝利だ。
土壇場の87分、デンバ・バが待望のチーム2点目を押し込むと、チェルシーの指揮官は、選手たちが重なり合ってゴールを祝うコーナーフラッグに向かって駆け出した。
10年前のCLで、ポルト指揮官としてオールド・トラッフォードで披露した、あの“ビクトリーラン”を彷彿とさせるシーンだった。
しかし、スタンフォード・ブリッジのタッチライン沿いを走るモウリーニョは、喜びを爆発させてはいなかった。必死の形相で走っていた。それもそのはず。試合前日の会見で「勝利」という言葉を連発した指揮官は、「勝つため」の最後の策を授けるために駆け出したのだった。
試合後、モウリーニョは説明している。
「デンバとナンド(フェルナンド・トーレス)に戦術面の変更を伝えるためだ。敵はアレックスを前線に押し上げるだろうから、デンバを最終ラインの盾に使いたかった。サイドを上がるマクスウェルはナンドにカバーさせたかった。(後半からの出場で)体力のある両FWに守備の任務を伝えに行っただけだ」。
そう語る表情は、持てる力を振り絞って戦った者の表情だった。