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『決定力不足』という言い訳にサヨナラを ~決定力を個人技頼みにしないための戦術的アプローチ~(前編)

日本代表が試合で無得点に終わると、「決定力不足」「決定力のある選手がいない」などと報道されることが多い。長年言われ続けている問題だが、未だ解消されることはない。これを解決するには、その要因を分析し、そして克服する手段としての戦術にアプローチする必要がある。

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue56】掲載

永遠のテーマ「決定力不足」の要因

『決定力』とは何か――?

 簡単なゴールを確実に決めることができるのが決定力なのか、難しいゴールを決めるのが決定力なのか、大舞台でゴールを決めるのが決定力なのか。以前から当たり前のようにメディアで使用されてきたサッカー用語ではあるが、その用法を明確に説明できる人は意外に少ないのではないだろうか。

 そういう筆者も、実のところ“正解”はよくわからない。ただし、単純な得点力ではなく、試合を決定付ける力=決定力と考えるなら、少なくとも4-0の場面で5点目の追加点を決めるような力を決定力とは呼ばないだろう。0-0や1-1などの拮抗した試合状況の中で、お互いの膠着をぶち破るゴールを叩き込んで試合を決める能力。それこそが『決定力』と呼ぶのにふさわしいのではないか。本稿ではそのように定義して話を進めたい。

 膠着をぶち破る決定力といえば、例えばエル・クラシコのバルセロナにおけるメッシのドリブル突破からのシュート、レアル・マドリーにおけるC・ロナウドのカウンターからのシュート、あるいは南アW杯の日本戦で見せたスナイデルのミドルシュート、デンマーク戦で見せた本田圭佑のブレ球フリーキックなどが挙げられるだろう。

 規律の整ったディフェンス組織をパスワークのみで崩すのは容易ではなく、いずれも圧倒的な個人技によるスーパーゴールが試合の膠着を破っている。

 では、そのような個人技を持つ選手が天から降ってこなければ、チームの決定力は高まらないのか? 

 個人の才能に委ねるのは簡単なことだが、筆者がこれまでにサッカーの取材を重ねた中では、トレーニングや戦術の構築で決定力の向上にアプローチする方法はたくさんあり、そのヒントはさまざまなサッカーシーンに転がっている。

 本稿は世界のサッカーを参考にしつつ、日本サッカーの永遠のテーマでもある決定力不足の要因分析と、それを克服する手段の模索にチャレンジしたい。

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