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盤石の勝利を飾ったバイエルン。“ユベントス封じ”の戦術を徹底分析

3日に行われたチャンピオンズリーグのベスト8、バイエルン・ミュンヘンはホームでユベントスに2-0で勝利。相手に隙を与えない完勝だったが、その要因はどこにあるのか? 戦術的視点から徹底分析する。

text by 河治良幸 photo by Kazuhito Yamada

ほとんどチャンスを作らせなかったバイエルン

 立ち上がり1分にアラバのシュートが決まりバイエルンが先制したが、ユベントスにとっては不幸な失点だった。自陣の左サイドでマルキジオが何とか中につないだボールをピルロが前に蹴り出そうとしたが、回転がかかったボールを蹴り損ねるという名手らしからぬミスで、相手のシュバインシュタイガーに“パス”してしまった。

 そこからんバイタルエリアの手前で受けたアラバが左足で狙ったが、守護神ブッフォンの能力から考えれば一撃で決めるには厳しい位置だ。しかし、ボールはユベントスのMFビダルが咄嗟に出した右足のつま先に当たり、さらにバウンドで方向が変わる形でゴール右隅へ。ブッフォンは懸命に体を伸ばしたが届かず、ゴールネットを揺らした。

 いきなりのビハインドを強いられたユベントスとしては早い時間帯から反攻に出なければいけなかったが、なかなか大きなチャンスを作ることができず、逆にバイエルンの効果的な攻撃によって、ノイアーよりもブッフォンがギリギリのセーブを強いられる場面が多かった。

 結局、63分にミュラーのゴールで1点を追加したバイエルンが2-0で勝利したが、彼らがユベントスにほとんどチャンスを作らせなかった要因はとして主に3つの点があげられる。

勝負を分けた3つのポイント

1.ウィングバックを下げさせる

盤石の勝利を飾ったバイエルン。“ユベントス封じ”の戦術を徹底分析
バイエルンのキャプテン、ラーム【写真:山田一仁】

 ユベントスは[3-5-2]を採用しているが、攻守の生命線は左右のウィングバックのポジショニングだ。自陣で守る場合、サイドのスペースを埋めるために5バック気味にして対応するのだが、この状態が長く続くと、左右のウィングバックが高い位置で攻撃に参加することができなくなる。

 バイエルンはサイドバックのアラバとラームが高いポジションを取り、左ウィングのリベリー、そしてクロースのアクシデントで前半途中から右ウィングに入ったロッベンが代わる代わる高い位置から仕掛けることで、リヒトシュタイナーとペルーゾに自陣での守備を強いた。その攻撃で生じる後ろのリスクはボランチのグスタボがケアした。

 ユベントスはウィングバックの選手が高い位置で起点になれないと、2列目のビダルやマルキジオも飛び出すタイミングを見出しにくい。そうなると基本的に守備陣は2トップのマトリとクアリアレッラをしっかりマークすれば良いわけで、ユベントスはボールを持っても手詰まりになってしまった。

 そうした状況でユベントスがボールを動かしながら主導権を取り、攻撃に厚みを付ければ状況も変わり得たが、速攻気質の強い彼らは縦に運ぶ意識が強く、半ば強引に出したパスをバイエルンの守備陣にカットされた。

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