10人を代えたアーセナル
10月21日のシェフィールド・ユナイテッド戦に敗れた後、ウナイ・エメリの退陣を要求する「#EmeryOut」のハッシュタグが、大量にソーシャルメディア上に飛びかった。
その起用法に批判があるとはいえ、ここまでのアーセナルはプレミアリーグで5位につけ、UEFAヨーロッパリーグではアイントラハト・フランクフルトを3-0と、スタンダール・リエージュを4-0で下し、この日は逆転勝利を収めてグループリーグ3連勝を決めている。
シェフィールド戦から中2日でこの試合に臨んだアーセナルは、ウィロック以外の10人を変更。スタンダール・リエージュ戦と同様に、最終ラインにはリーグ戦の出場機会がない選手が並び、前線には若手選手が起用された。
FWアレクサンドル・ラカゼット
MFガブリエウ・マルチネッリ、エメル・スミス・ロウ、エインシュリー・メイトランド=ナイルズ
ジョセフ・ウィロック、ルーカス・トレイラ
DFキーラン・ティアニー、ロブ・ホールディング、スコドラン・ムスタフィ、エクトル・ベジェリン
GKエミリアーノ・マルティネス
メスト・エジルはこの日もベンチ外。グラニト・ジャカはターンオーバーでベンチを外れ、トップ下にはスミス・ロウが起用された。
アーセナルを救ったペペの左足
アーセナルは開始間もなく先制点を許してしまう。トッテナムの下部組織で育ち、今季加入した20歳のFWマーカス・エドワーズが、かつてのライバルクラブを相手に貴重な先手を奪った。
マルチネッリのゴールで32分に同点に追いついたおよそ5分後、トレイラからメイトランド=ナイルズへのパスがミスになり、ギマラエスにボールが渡る。FWダビドソンンが左足で放ったシュートは右ポストへ直撃。これに詰めていたFWブルーノ・ドゥアルチが反応して右足を振り抜いて、32分にアーセナルは勝ち越しゴールを決められた。
これまで出場機会の少なかったメンバーを多く起用したアーセナルは、最終ラインから中盤のところでミスが散見。不用意なボールロストからカウンターを浴びる場面も少なくなく、ギマラエスの2点目はまさにそれだった。
1点を追うアーセナルは後半開始からMFダニ・セバジョスとMFマテオ・ゲンドゥジを投入して中盤に置き、トレイラをトップ下に移した。セバジョスとゲンドゥジによって攻撃の組み立ては改善。両サイドバックは高いポジションをとることが可能になり、攻撃に幅をもたらした。
75分にラカゼットに代わって入ったFWニコラ・ペペが大きな仕事を果たす。トレイラが倒されて得たFKは中央右寄り。背番号19の左足から放たれたボールは、GKの逆を突いてファーよりのサイドネットへと吸い込まれた。
後半アディショナルタイムにゲンドゥジがFKを獲得。ゴール正面の位置からペペがゴールネットを揺らして逆転。苦しみながらも飛び道具が炸裂し、アーセナルはEL3連勝を飾った。
悩ましい中盤の組合せ
今季アーセナルに加入したペペは、初得点となったプレミアリーグ第6節のアストン・ビラ戦で決めたPK以来のゴールを決めた。出場機会が与えられながらもゴールに関わる結果を残せていなかったが、プレースキックという武器の価値を証明することができた。
前線はこの日、ラカゼットが怪我から復帰以来はじめて先発で起用された。昨季に抜群のコンビネーションを見せていたラカゼットと、ピエール=エメリク・オーバメヤンのコンビが復活すれば、ペペは後半のジョーカーとして起用することもできるだろう。
なんとか勝ち点3を得ることができたアーセナルだったが、64%のボール保持率を記録しながらも、自身が放った15本を上回る18本のシュートを浴びた。これまで出場機会の少なかった選手にチャンスが与えられたが、流れを変えたのは後半から投入された主力メンバーだった。
ギマラエスは4-1-4-1でブロックを敷き、中盤中央のデニス・ポア、アグ、アンドレ・アルメイダは合計5つのインターセプトを記録。相手の中盤をボールの獲り所に設定し、ショートカウンターを幾度となく繰り返してシュートへとつなげた。
前半はウィロックとトレイラのコンビで組み立てに苦しんだ。ダイナミズムをもたらすゲンドゥジと創造性があるセバジョスが起用された後半は、機能性の点で改善されているように映った。
フル出場したトレイラ、後半から出場したセバジョス、ゲンドゥジ、低調なパフォーマンスで退いたウィロック、ベンチを外れたグラニト・ジャカと、もはや構想外ともいえるメスト・エジル。それぞれ異なる特徴を持つ中盤の選手たちがいる中で、エメリ監督が誰を起用するのかが、今後のカギを握るだろう。
(文:加藤健一)
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