伊東純也が「あそこで入っていれば」と振り返るシーン
チャンスは作った。だが、決め切れなかった。10月23日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループE第3節。リバプールに1-4で敗れた後で、伊東純也は開口一番、「ザルツブルク戦みたいに早く失点してしまいましたけど、その後は、前半に関しては、ビッグチャンスはこっちの方が多かったかなと思います」と振り返った。
2分、アレックス・オックスレイド=チェンバレンにミドルシュートを決められ、早くも苦しい展開となったKRCヘンク。もし前半に作った「ビッグチャンス」の内、1本でも決まっていたら……。ルミヌス・アレナの熱狂も追い風となり、「流れ」は変わったかもしれない。
「あそこで入っていれば、あそこで流れが来たと思いますけど、入らなかったので、(試合の流れは)そのままだったかなあと思います」
伊東が「あそこ」と振り返るのは、26分のシーン。右サイドを抜け出した日本代表MFが、一呼吸置いて、クロスをファーサイドに送る。後ろから飛び込んできたマブワナ・サマタがヘディングシュートを決める。ゴール裏が狂喜に揺れる。だが、伊東が抜け出した時点でオフサイドの判定。ノー・ゴールに終わった。
そしてヘンクは、「あそこ」の場面以外にもカウンターから「チャンス」を作っている。
伊東は手応えを口にする。
「(リバプールに)ボールを持たれるのはしようがないということで、ブロックで引いてカウンターという狙いだったので、それが何回か上手くいって、チャンスに繋がったと思います」
CL王者に「硬くなってしまった」
5分、ロングボールにサマタが抜け出して、ドリブルでペナルティエリア内まで持ち込んでシュート。19分には、同様に伊東が抜け出して、エリア内でデヤン・ロブレンとの1対1の局面を迎える。しかし日本人アタッカーは、残念ながら転んでしまい、シュートを打ち切ることはできなかった。
伊東がロブレンを前にした場面を振り返る。
「縦に行ってシュートを打つか、切り返すか、迷ったら力が抜けてしまって、そのまま倒れてしまったんですけど、ちょっと硬かったかなあと思います」
そして40分、またも伊東が右サイドからグランダーのクロスを入れ、サマタが足を出したが、惜しくも届かなかった。
RBザルツブルク戦、SSCナポリ戦に続き、伊東にとって初参戦のCLも3戦目となったが、このリバプール戦が、無意識の内に最もプレッシャーがあったという。
「今日が個人的には一番硬くなったというか、硬くなってしまったかなあと思います」
相手が昨季のCL王者であることだけを考えても、伊東が「硬くなってしまった」のは無理もない。現在のリバプールを相手に平常心で臨める選手を見つける方が難しい。そして日本人アタッカーだけでなく、チーム自体が「硬くなってしまった」ようだ。
伊東は仲間たちの様子を次のように見た。
「焦ってしまうシーンがウチは多かったと思うので、もっと冷静になれば良かったかなあと思います」
「全然敵わなかったっていう感じはなかった」
対照的にリバプールはチャンスを次々とモノにしていった。後半だけでヘンクは3ゴールを奪われる。88分にスティーブン・オデイが一矢報いたが、時既に遅し。1-4のスコアでユルゲン・クロップ監督率いるチームに敗れることになった。
完敗だったが、伊東は「全然敵わなかったっていう感じはなかった」と言う。
「最終的にポンポンと取られてしまいましたけど、それまでは、ボールを持たれましたけど、試合の流れはイメージ通りだったと思いますし、そこでのカウンターの質は大事かなあと思います」
「カウンターの質」だけでなく、「フィニッシュの質」。課題は明白だ。
「最後のフィニッシュの質のところはあると思いますし、こっちは守備で走っている分、少し疲労はあったかと思いますけど、そこは想定内だったので、やはりチャンスで決めていれば、というところはあります」
次節は11月5日に、アンフィールドでリターンマッチとなる。
「今日みたいに硬くなったらもったいないので、もう少し上手くやりたいなとは思います。もっとチャレンジしていった方がいいかなあと思います」
もちろんアウェイでリバプールを相手に決定機を決め切るのは簡単ではない。しかし、カウンターからチャンスは作ることができている。伊東が「楽しまなきゃいけない」とも話すように、リラックスした精神状態でアンフィールドでの試合に臨めば……ヘンクは一矢報いることができるかもしれない。
そして「チャレンジ」の先に生まれたその「一矢」は、伊東にとって、さらなる自信に繋がるはずだ。
(取材・文:本田千尋【ヘンク】)
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