ポイントとなる右サイドの人選
2022年カタールワールドカップアジア2次予選3連勝のかかるタジキスタン戦が今日15日、現地時間17時15分(日本時間21時15分)にキックオフされる。移動を伴う中4日で中央アジアの地に赴いた日本代表は数々の困難に直面する可能性が高い。それでも、この壁を越えて勝ち点を9に積み上げ、2次予選突破への大きな一歩を踏み出すことが肝要だ。
森保一監督が10日のモンゴル戦からどの程度、メンバーを入れ替えるかは大きな注目点と言っていい。6-0の快勝を考えると、9月のパラグアイ・ミャンマー2連戦のようにスタメンを固定して戦いたいというのが本音のはずだ。しかし、すでに冨安健洋が負傷離脱し、酒井宏樹も足を捻挫している。センターバックは植田直通の出場が有力視されるが、右サイドは酒井で行くのか、安西幸輝で行くのか分からない。指揮官の判断が待たれるところだ。
攻撃陣も変更があるかどうか気になるところだが、一番のポイントはやはり右サイド。前回鮮烈な印象を残した伊東純也を引き続き先発させるのか、森保監督が信頼を寄せる堂安律をスタメン復帰させるのか。それとも久保建英を入れるのか。このチームでは左サイドが主戦場だが、右サイドで戦えることを2018年ロシアワールドカップやクラブで実証している原口元気もいて、選択は難しい。タジキスタンがサイドアタックに強みを持つチームで、守備の強度がより必要になることを考えると、今回は堂安の抜擢に落ち着きそうだ。
その場合、久保は伊東とスーパーサブの座を争うことになる。圧倒的な推進力と精度の高い右足クロスという武器を持つ伊東、同じく右サイドをタテへタテへと崩せる原口と、レフティの久保ではプレースタイルが大きく異なる。マジョルカでもしばしば見せている通り、久保はボールを持ってリズムを作り、中寄りのポジションに入り込みながらシュートかアシストを狙う役割を担うことになる。
トップ下起用の可能性
彼がピッチに立つであろう時間帯は相手も疲れているから、ベタベタな密着マークに来るとは考えにくい。DFと距離が空いていて、ある程度のスペースが状況なら、鋭いパスセンスやゲームメーク力をより発揮できるはず。そのうえで得点に直結する仕事を見せられれば、理想的なシナリオだ。短時間でもチームの勝利につながるような働きができれば、森保監督の評価も上がるだろう。
現時点では右サイドが最有力と見られる久保だが、トップ下をこなせることも周知の事実。6月のコパ・アメリカ(南米選手権)でもトップ下でプレーし、ホセ・ヒメネスやディエゴ・ゴディンといった世界的DFとも堂々と対峙している。
「いろんなレパートリーを増やしていくことが自分にとって非常にプラスになる。どこでもできるっていうと『強みがない』と思われがちですけど、今の自分はどんどん吸収してく段階。『どこでもできるよ』っていうのを1つのウリにしていければいい」と本人も前向きに言うように、その多様性は1つの大きなポイントだ。
FC東京時代の久保と対峙した松本山雅の反町康治監督も「彼はギリギリの状況で判断を変えられる選手」と賞賛したが、そういった鋭い戦術眼は中央に入った時の方がより出やすい。しかもチーム最大の得点源である南野拓実が過密日程を強いられていて、疲労や状態次第でベンチに下げなければならなくなるかもしれない。そこで久保が代役に指名されることは大いに考えられる。
ライバルは多い。次戦は試金石に
マジョルカ移籍後は代表とクラブの掛け持ちなどが災いしているのか、ややパフォーマンスが低下している印象もあるが、モンゴル戦1試合を欠場したことで逆にフレッシュな状態を取り戻したはず。森保ジャパンに活力を与えるようなイキイキとした働きを今こそ見せ、周囲を安心させてもらいたい。
6月のエルサルバドル戦で初キャップを飾ってから4カ月。代表でのハッキリしない位置づけに、本人もモヤモヤ感を抱いているかもしれない。それだけ森保ジャパンの2列目アタッカー争いは熾烈ということ。
このところ招集見送りとなっている香川真司、乾貴士ら実績ある30代プレーヤーも所属クラブでコンスタントに活躍している。さらに、欧州で価値を高め、14日のU-22ブラジル代表戦にも先発した食野亮太郎ら東京五輪世代も控えている。A代表に継続的に呼ばれていると言っても、久保は南野や堂安、中島翔哉のように地位を確立させられたわけではないのだ。
だからこそ、1つひとつの戦いを大事にして、自分の持てる力を最大限出し切ることが重要だ。18歳の代表アタッカーというのは、日本ではまだまだ稀有な存在だが、世界を見渡せば同世代で活躍している人間は何人もいる。久保建英が本当にA代表の中心選手になっていけるのかどうか。今回のタジキスタン戦は1つの試金石になるかもしれない。まずは出番があるかどうかだが、出場した場合にどんな攻撃な変化をもたらすのか。その一挙手一投足を今一度、しっかりと見極めたいものである。
(文:元川悦子)
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