後半早々に途中交代
もし、中島翔哉がフェイエノールトの選手だったら――。日本代表MFが試合中に発揮するパフォーマンスは、まるで違うものになっていたかもしれない。10月3日に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループG第2節。FCポルトは、敵地でフェイエノールトと戦った。
[4-4-2]の布陣の中、中島は左SHのポジションで先発出場する。日本人アタッカーは、同サイドの敵のSBにボールが入れば、即座にプレスを掛けに行くなど、まずは守備面で貢献。しかし攻撃面では、フェイエノールトのしっかりとしたブロックの中で、なかなかボールを貰うことができず、高い位置からドリブルで仕掛けた場面はわずかに留まった。
SBアレックス・テレスとのコンビネーションで左サイドを崩しにかかったのも、20分の場面のみ。8分には、直接FKから裏に抜け出してチャンスを迎えていたが、角度が難しかったこともあってか、決め切ることはできなかった。観衆のテンションも高いヨーロッパのアウェイゲームに、どこか入り切ることができなかった中島。後半が始まって間も無い53分、交代を告げられてピッチを去ることになった。
たしかに中島の出来は芳しくなかったかもしれない。だが、そもそもポルトというチーム全体の出来が芳しくなかった。フェイエノールトのハイプレスに苦しみ、カウンターの精度を欠き、最後の局面でもフィニッシュの精度を欠いた。守備ブロックの構築やボールを奪った後の連動性など、攻守両面のオーガナイズという点で、セルジオ・コンセイソン監督よりもヤープ・スタム監督の方が上だったと言わざるを得ない。
敵軍のウイングを活かした攻撃
フェイエノールトは、サイドチェンジから逆サイドに張る選手にフリーの状態でボールを預け、何度も効果的なサイドアタックを仕掛けてきた。それらの攻撃は、おそらく何度も練習を繰り返してオートマティズムを磨いてきたことを伺わせるものだった。
特に1点目が入る少し手前の場面。中島のプレスをかわしたステーフェン・ベルハイスが、中盤から敵陣の中央に走る左SBリチアーノ・ハプスにボールを送る。ハプスはダイレクトで左サイド前方のスペースに叩く。そこにサム・ラーションが走り込んで来る。そこから1対1の局面を迎えたスウェーデン人FWは、積極的に仕掛けてシュートを打つ――。
こうしたウイングを活かした攻撃パターンは、オランダのクラブならではのものと言えるだろう。そしてもし、ラーションのポジションに中島が入ったとしたら…日本代表の10番は、その特性を思う存分活かすことができるだろう。そのドリブルで猛威を振るうことができるはずだ。
もちろんこうした仮定に、あまり意味はない。そもそも中島はポルトの選手で、フェイエノールトに移籍する予定もなければ、ウイングに理解のある国=オランダの他のクラブに移る予定もない。しかし、中島の持ち味を最大限に活かすためには、もう少しチームとして、日本屈指のドリブラーがフリーでボールを持てる状況を作り出す必要があるのではないか。
今回のEL対フェイエノールト戦から、コンセイソン監督が、オランダのエッセンスを持ち帰ることができれば、それは中島だけでなくポルトにとっても有益なものとなるはずだ。現役時代はポルトガルを代表するドリブラーだった指揮官である。ウインガーを前面に出す文化に対して、何ら抵抗はないだろう。
(取材・文:本田千尋【ロッテルダム】)
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