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久保建英、チーム最低タッチ数で悪戦苦闘も…。それより深刻なマジョルカの現状、今後の改善点は?

リーガ・エスパニョーラ第7節、アラベス対マジョルカが現地時間29日に行われ、2-0でホームチームが勝利している。MF久保建英はこの日も先発に名を連ねたが、MFムバラク・ワカソなどに徹底したマークを受けるなど悪戦苦闘。ボールタッチ数はチーム最低を記録してしまった。ただ、それよりも深刻なのはマジョルカの現状だ。(文:小澤祐作)

text by 小澤祐作 photo by Getty Images

下位対決で先発も…

久保建英
アラベス戦でも先発出場を果たした久保建英【写真:Getty Images】

 マジョルカにとって、現地時間29日に迎えた一戦は大一番だったと言えるだろう。この日の対戦相手であったアラベスは、リーガ・エスパニョーラ第6節を終えた時点で1勝2分3敗の成績。マジョルカを勝ち点1差で上回っていたとはいえ、ここ3試合は連続して無得点に終わっているなど、現状はかなり良くなかった。マジョルカからすれば、アウェイとはいえここで勝ち点3を奪い、下位脱出へのキッカケを掴み取りたいところだった。

 そんな重要な一戦で、MF久保建英は再びスタメンに名を連ねた。前節のアトレティコ・マドリー戦では強豪相手に堂々たるプレーを披露し、対峙したDFレナン・ロディを再三苦しめるなど大きく躍動した同選手。当然、この日も攻撃の中心として、決定的な仕事を果たすことが求められた。

 ただ、この日はいつも以上に苦戦を強いられた。久保が攻撃の中心となっていることは、もちろんだがアラベス側にも伝わっている。そのため、ホームチームのディフェンス陣は久保を徹底的に警戒。その意識は、試合の立ち上がりから見て取れた。

 6分、久保は敵陣内でDFホアン・サストレが放ったクロスのこぼれ球を拾う。日本人MFは左足でボールをキープしながら味方のサポートを待っていると、その瞬間にMFムバラク・ワカソが背後から強烈なタックルを見舞った。ファウルは取られなかったため、クリーンなタックルだったのだが、アラベスが久保を“最も危険”な選手として意識していたのはこのワンプレーだけ切り取っても明らかであった。

 それでも久保はボールを持てばやはり違いを魅せる。14分、自陣右サイドでパスをもらうと、右足でファーストタッチ。すると寄せに来たワカソの体勢が整っていない間に素早く左足でボールを縦方向に押し出し、簡単にガーナ人MFを置き去りにしたのである。

 しかし、それ以降はなかなか見せ場を作ることができない。そもそも、久保にパスが回ってくる機会が、あまりにも少なすぎた。27分にはMFアレイクス・フェバスからボールを受けるものの、久保を幾度となく苦しめたワカソが正面から強烈なスライディングタックル。このシーンではイエローカードが提示されたが、久保はこの激しいマークに悪戦苦闘していた。

 久保は後半に入ってもなかなかインパクトを残せない。48分には自陣で二人を置き去りにし、FWアンテ・ブディミールへスルーパスを出すなど味方のピンチを救ったが、ゴール前での仕事はあまり多くはなかった。

 結局、久保はスタメン組の中では最低となるタッチ数26回でこの試合を終えた。ドリブル成功数は両チーム合わせてトップの3回であったが、シュート数はわずか1本に留まった。

久保の中央配置もありか?

 チームも76分にFWルーカス・ペレスにPKを沈められ、さらにその10分後にはFWホセルに追加点を許し0-2完敗。これでマジョルカはリーグ戦6試合勝ち星から見放されており、順位は降格圏となる19位に沈んでいる。昇格1年目で苦戦を余儀なくされることはある程度予想していたが、どこかで浮上のキッカケを作れなければ、シーズン早々に降格という最悪の結末は逃れられないだろう。

 さて、久保が出場している試合はここまですべてチェックしているが、上記した通りマジョルカに浮上のキッカケ、希望が見えないのはなんとも深刻である。チームとして攻守両面で曖昧なプレーが多く、形が見つからない。久保は間違いなく攻撃の中心だが、背番号26を生かすのか囮に使うのかも微妙なところ。サポートは相変わらず遅く、何よりパスが回らない。試合内容を一言で表すならば、「ひどい」だ。

 マジョルカは基本的にGKマノロ・レイナを含めた11人全員が最終ラインからパスを繋いで組み立てるスタイルを目指している。ただ、その質はあまりにも低い。たとえば8分の場面では、レイナからDFマルティン・ヴァリエントへパスが出たが、お互いの意思が共通した方向に向いておらず、素早く相手に寄せられあわやといったシーンを招いた。

 そもそもGKまでボールを下げたあとのポジショニングも悪い。「本当に繋ぐ意識があるのか?」と疑いたくなる。結局、相手のプレスによりビルドアップを阻まれるとロングキックに切り替えるが、セカンドボールもほとんどがアラベスの選手の下へと渡った。これでは久保にボールが回ってこないのは当たり前。いくら日本人MFがいい動きをしたとしても、そこまでボールが運べないのならば、すべて水の泡だ。ボールを繋ぐスタイルを目指しているのに、パス成功率80%を越えたのがMFサルヴァ・セビージャのみという現実も忘れてはならない。

 何かを変える必要があるのは明らかだ。ビセンテ・モレノ監督は動かなければならない。たとえばフォーメーションを変えるのではなく選手の配置を動かすだけでもいい。何かしらの工夫は現状打破のためには必須だ。

 これまで右サイドでの起用がほとんどである久保を中央に動かす手もあるだろう。マジョルカの組み立ての起点はセビージャだが、彼の近くに久保を置くことでよりボールの動きがスムーズになる気もしている。アトレティコ・マドリー戦ではセビージャ→久保と中央で細かなパスを繋ぎチャンスを作ったが、そういったシーンを今後も作り出していくならば、そういった改善も悪くないのではないだろうか。

 また、同チームは左サイドから攻撃を仕掛けることも多いが、質は低い。そこで久保を中央に置き、自由な動きを与え左サイドに厚みをもたらせれば、割と機能するのではないか。あくまで「理想」ではあるが、試す価値はあるだろう。モレノ監督の今後の動きに期待したい。

(文:小澤祐作)

【了】

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