「まあこんなもんか…って感じでした」(堂安)
明らかにクオリティはPSVの方が上だった。現地時間9月19日に行われたヨーロッパリーグ(EL)グループDの第1節。マルク・ファン・ボメル監督率いるチームは、ホームでスポルティング・リスボンと戦った。
試合後の3-2というスコアだけを見れば、緊迫感の中で派手な撃ち合いが繰り広げられたようなゲームを想像するかもしれない。しかし、実際のフィリップス・スタディオンは、緩やかな雰囲気が漂い、ちょっとしたお祭りムードだった。チャンピオンズリーグ(CL)で実現してもおかしくないカードだったにもかかわらず、CLのようなテンションと強度は見当たらなかった。
よって78分から途中出場した堂安律が、拍子抜けしたのも無理のないことだった。
「うちのチームが強かったですし、今日も。僕が出た10分間で、凄いと思う選手もいなかったですし、まあこんなもんか…って感じでしたね」
ただ、昨季のEL準々決勝2ndレグでフランクフルトにやってきたベンフィカと同じように、この日アイントホーフェンで試合をしたスポルティングも、モチベーションの高さが疑わしかった。ドニエル・マレンやステフェン・ベルフワイン、モハメド・イハッタレンら若く野心溢れる選手を揃えたPSVの方がアグレッシブだった。ボールを力強く回して、スポルティングを圧倒した。
もちろん初めて欧州の舞台に立ったことに対して、堂安自身、何も感じないわけではない。
「もちろん嬉しいです。サッカー選手として少しでも上のステージで、という気持ちがあって、もちろん嬉しい気持ちはありました。ただ、ここで一喜一憂していては成長できないですし。まだスタメンで出たわけではないし、危機感を持ってやっています。そういう意味では、下にいる立場なので、追い上げるだけで楽しくて仕方ないですね」
堂安は過密日程を大歓迎
日本代表MFは、ブルマとの交代で右サイドに投入された。その時、ファン・ボメル監督から、堂安は「まずは守備の戦術を伝えられた」という。そして攻撃に関しては、次のように言われたのだそうだ。
「攻撃は自由にやれば、近くに良い選手がいるから」
投入された時のスコアは3-1だったので、当然と言えば当然だが、堂安に過度なミッションが与えられることはなかった。ファン・ボメル監督は、ひとまず新加入の堂安を、PSVというチームに少しずつ慣れさせようとしているようである。
試合が決まっている状況で、10分間の出場ではほとんど見せ場はなかったが、アディショナルタイムに入った直後、堂安は、ロングカウンターから左足で惜しいシュートを放った。ゴールを決めることはできなかったが、それでも堂安はポジティブだ。
「感覚的にフローニンゲンに来た当初を思い出すような感じで、すごいフレッシュな気持ちでプレーできています」
そしてしばらく過密日程が続くが、堂安は「楽しくて仕方ないです」と言う。
「すぐに試合があるのが楽しくて仕方ないですし。どちらかというと僕は不安症というか、メンタルを常にハイで持っておきたいタイプなので、試合が常にあることによって、自分のモチベーションを常にハイで保てますし。どうしても4日、5日空いてしまうと、もっとやりたいという欲が出てくるので、早く試合ができていいと思いますし。相手も強いのでね、次の試合の相手はアヤックスなのでね」
試合数が多ければ、それだけ出場のチャンスが増えるということでもある。22日のアヤックス戦でも、試合展開によっては、堂安が投入される可能性はある。オランダ王者との一戦で出場の機会が巡ってきたら、緊迫感の中でインパクトを残す、またとないチャンスだ。
(取材・文:本田千尋【アイントフォーヘン】)
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