ワールドクラスの陣容。カギを握るのはやはり…
ついに、ユベントスにも新しい時代がやってきた。同クラブにセリエA5連覇、チャンピオンズリーグ(CL)・ファイナル進出2回、4季連続の国内2冠をもたらしたマッシミリアーノ・アッレグリ監督が昨季限りで退任。後任には昨季チェルシーをヨーロッパリーグ(EL)制覇に導いたマウリツィオ・サッリ監督が就くことになったのだ。
これにより、チームの戦い方は大きく変わるだろう。主に個のクオリティを重視したアッレグリ監督と比べ、新監督のサッリは組織的なサッカーを目指している。FWクリスティアーノ・ロナウドら昨季の主力はおおむね残留を果たしているが、これらの選手に自身の考えをどこまで埋め込み、セリエAやCLでどれだけの結果を残せるのかは非常に興味深いところだ。
さて、C・ロナウドを加えるなど昨季の移籍市場を大いに賑わせたユベントスだが、今季の補強もかなり世界を驚かせたと言える。長年の目標であるCL制覇へ向けての本気度と熱意が十分に伝わってくる。ユベントスは今季もそのような夏を過ごした。
まず一番に、相変わらずの補強の上手さを見せた。アーセナルとの契約交渉がまとまらなかったMFアーロン・ラムジー、パリ・サンジェルマンとの関係性が冷え切っていたMFアドリアン・ラビオ、クラブのレジェンドであり一年での電撃復帰となったGKジャンルイジ・ブッフォンをなんと移籍金0円で獲得。これまでにもユベントスはフリーとなっていた選手を大きな戦力として迎え入れてきたわけだが、今年もやはり動き出しは素早かった。ラムジー、ラビオ、ブッフォンと実力十分な3選手を0円で獲得できたという事実は、素直に評価するべきであろう。
ただ、サッリ監督の求めるスタイルにラムジーやラビオがマッチするかは微妙なところ。もちろん実力は十分で、フリーで獲得できたことは大きいが、生かすも生かさぬもサッリの手腕次第ということになりそうだ。
DFジョルジョ・キエッリーニとDFレオナルド・ボヌッチが今なお欠かせぬ存在と、高齢化が進んでいた最終ラインにも期待の戦力を加えた。昨季アヤックスのCLベスト4進出に貢献したDFマタイス・デリフトを他のクラブとの壮絶な争奪戦の末、獲得。サッスオーロからはトルコ人DFのメリフ・デミラルも加入した。前者は20歳、後者は21歳と将来有望なプレイヤーであり、最終ラインの若返りという長年の課題にもどうやら終止符が打たれそうだ。とくにデリフトの能力はすでに世界に証明済みで、ユベントスにとってはかなり大きな新戦力ということになりそうだ。
また、DFジョアン・カンセロはマンチェスター・シティに去ったものの、同選手とのトレードでDFダニーロが加入。ポルトガル代表DFよりは守備の強度が期待でき、攻撃面では高質なクロスで違いを生みだせる頼もしい存在だ。デビュー戦となった第2節のナポリ戦では途中出場から得点を挙げるなど、さっそく結果も残した。こちらも楽しみなプレイヤーである。
と、ここまでの補強は申し分ないのだが、不安があるとすればFWだろうか。サッリ監督の下、FWマリオ・マンジュキッチは構想外となっているようで、1トップのファーストチョイスとなるのはFWゴンサロ・イグアイン。ただ、控えを見ると1トップに適性を持つ選手がおらず、サッリ監督は「偽9番もできる」としてFWパウロ・ディバラを同ポジションで試す考えもあるようだが、ここにも安心感は持てない。C・ロナウドを1トップに置くことも可能であるとは思うが、同選手は昨季と同じく左サイドが主戦場となる模様。獲得を狙っていたFWロメル・ルカクなどの加入が実現しなかったのは、ユベントスにとって痛手となるかもしれない。
だが、やはり新シーズンのカギを握るのは新監督のサッリだろう。同指揮官の求めるポゼッションサッカーは約束事が多く、それをいかに早く、そして確実にチームに落とし込めるかが今季のポイントになるはず。揃える戦力は世界でもトップクラスを誇るため、当然ながらハマれば爆発的な強さを見せるだろう。ナポリ、チェルシーを経てユベントスへ。同クラブがサッリの監督人生の中で最も豪華な戦力を持つと言えるが、果たしてそうしたタレントたちをうまく束ねられるか。
補強・総合力診断
IN
GK ジャンルイジ・ブッフォン(パリ・サンジェルマン)
DF マタイス・デリフト(アヤックス)
DF メリフ・デミラル(サッスオーロ)
DF クリスティアン・ロメロ(ジェノア)
DF ダニーロ(マンチェスター・シティ)
DF ルカ・ペッレグリーニ(ローマ)
MF アーロン・ラムジー(アーセナル)
MF アドリアン・ラビオ(パリ・サンジェルマン)
FW ゴンサロ・イグアイン(チェルシー/期限付き移籍期間満了)
FW マルコ・ピアツァ(フィオレンティーナ/期限付き移籍期間満了)
OUT
GK エミル・アウデーロ(サンプドリア/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF ジョアン・カンセロ(マンチェスター・シティ)
DF レオナルド・スピナッツォーラ(ローマ)
DF アンドレア・バルザーリ(現役引退)
DF マルティン・カセレス(ラツィオ/期限付き移籍期間満了→フィオレンティーナ)
DF ルカ・マッローネ(エラス・ヴェローナ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF クリスティアン・ロメロ(ジェノア/期限付き移籍)
DF ロジェリオ(サッスオーロ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
DF ルカ・ペッレグリーニ(カリアリ/期限付き移籍)
MF ステファノ・ストゥラーロ(ジェノア/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW リッカルド・オルソリーニ(ボローニャ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW モイーズ・キーン(エバートン)
FW レオナルド・マンクーソ(エンポリ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW アルベルト・チェッリ(カリアリ/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
FW アンドレア・ファビッリ(ジェノア/期限付き移籍期間満了→完全移籍)
補強評価:A
ラムジー、ラビオ、ブッフォンをフリーで獲得できたのは評価に値する。サッリ監督の求めるスタイルにマッチするかは現段階で微妙なところであるが、選手層により厚みが増したのは紛れもない事実だ。また、デリフトやデミラルが加入したことにより最終ラインの若返りも実現。カンセロとのトレードで加入したダニーロも楽しみな存在だ。一方で不安なのがFW。1トップのファーストチョイスはイグアインで、控えには同ポジションに適する選手がいない。ルカクやFWマウロ・イカルディらの加入が実現しなかったのは痛手と言えるだろう。
総合評価:S
揃える戦力はやはり豪華で、世界でもトップ10に入るほどの実力があるのは明らか。最大の目標であるCL制覇にセリエA9連覇というミッションを達成するだけの力はあると見て間違いないだろう。ただ、サッリ・スタイルの浸透に時間がかかるようであれば、当然ながら低迷する恐れもある。総合評価はSとしているが、やはりすべてのカギを握るのは他ならぬサッリだ。
【了】