サンフレッチェに似ている現在の日本代表
難しい試合となる可能性もあったワールドカップアジア2次予選の初戦を、驚くほどあっさりと切り抜けた。日本代表は火曜日の夜にヤンゴンで行われた試合でミャンマーに2-0の勝利を収め、2022年カタール大会に向けて何の問題もなく順調なスタートを切ることに成功している。
始動以来印象的な戦いを見せてきた森保体制は、また一歩前進を遂げた。3年後のワールドカップで次こそはラウンド16のその先へと足を踏み入れたいサムライブルーを、元サンフレッチェ広島の指揮官は着実に進歩させている。
森保監督はこれまで代表チームで18試合指揮を執り、敗戦を味わったのはわずか2回(コパ・アメリカに連れて行った“五輪代表”を含めれば21試合で3敗)。監督の頭に描くチームは確かに形になり始めている。
以前の日本代表はいつも1人や2人のスター選手がチームの顔となっているように感じられ、監督もファンもメディアもその選手に期待を集中させていた。だが現在のチームは、何人かの際立ったタレントを擁しながらも、少々イメージが異なっている。
例えば、過去10年間近くにわたって、日本代表はピッチ内でもピッチ外でも本田圭佑の強烈な個性に依存しすぎていた。この利発なMFが出場不可能になると別のチームになってしまっていた。
チームを支える2人のバイプレーヤー
もちろん現在のチームにも、試合を変えられるような選手たちはいる。中島翔哉や堂安律、南野拓実、久保建英といった選手たちは、今回のワールドカップサイクルにも、次回の2026年大会にも大きな期待を抱かせてくれる。だが今回は1人や2人の個人がチームを代表するのではなく、選手全員がひとつのチームを形作るという印象が強まってきている。2012年から2015年までの4年間に3回のJ1優勝を成し遂げた森保監督のサンフレッチェもまさにそうであったように。
新たに頭角を現してきた創造性あふれるタレントたちが輝きを放つことができているのは、柴崎岳や大迫勇也などの選手たちが堅実なプレーでサポート役を担っているおかげでもある。大迫は、本能的にプレーすれば決定力を発揮できることをパラグアイ戦でも示したとはいえ、考える時間があるような状況では、日本代表を次のレベルへと導くために必要な得点感覚をまだ備えきれてはいないかもしれない。だがファイナルサードでの彼のポストプレーはチームにとって欠かせないものだ。
「(日本には)高い技術を持ったスピードのある選手たちがいて、お互いを非常によく理解し合っている」。パラグアイ主将のファビアン・バルブエナは、0-2の敗戦を喫した先週の鹿島での試合後にそう話していた。
「彼らには独自のプレー哲学がある。いいチームだと思うし、他の強豪国ともいい勝負ができるだろう。これからきっと世界の強豪国のひとつになっていくと思う」
アウェイでの戦いは「みんな分かっています」
もちろんそれは日本代表が目標とするところだ。その段階に到達するためにはミャンマーよりもはるかに手強い相手を乗り越えていく必要があるとしても、新たなサイクルのスタートとなる一戦ではとにかく勝ち点3を手に入れることが重要だった。火曜日の試合の前には吉田麻也もそう話していた。
「アウェイの試合で、特に予選のアウェイの試合でどういう戦いをする必要があるのかはみんな分かっています」と吉田は話しつつ、過去の初戦で日本が苦戦を強いられてきたことを振り返った。2015年には、2018年ロシア大会の2次予選初戦でシンガポールと0-0のドロー。2016年9月には3次予選の初戦でUAEに1-2の敗戦を喫した。2014年ブラジル大会予選の初戦となった2011年9月の北朝鮮戦も、94分に吉田が決めた決勝点により1-0で辛うじて勝利を掴んだ。
「初戦ではいつも苦戦してきました。前回のシンガポールも、UAEも、その前のホームでの北朝鮮戦も。予選はキリンチャレンジカップとは全く別物だと思いますし、もちろん初戦から勝ち点3を取っていくことが必要になります」
ユニットとしてチームを構築する
ミャンマーではさほど問題なくその目標を達成することができた。だが吉田も認めているように、23人のメンバーのうち19人がいまや欧州でプレーしており、その欧州では最近シーズンが始まったばかり。大半の選手たちはまだ元気な状態だが、これからクラブでのレギュラーシーズンの負担が蓄積するにつれて状況はより難しくなっていく。
「移動や時差、気温などの色々な違いにもうまく対処しなければいけないので大変になっていくとは思います。相手が自分たちと同じレベルではなかったとしても」
「こういう経験が本当にある選手はあまり多くはないので簡単ではないとは思いますし、僕も同じです。うまくやっていく必要がありますし、それがワールドカップ出場の鍵になってくると思います。みんなうまく対応できると思いますけどね」
スター選手頼みではなく、ひとつのユニットとしてのチーム構築を進める森保監督も、そのことは意識しているように感じられる。このアプローチが長期的に成果をもたらすのかどうかは、タジキスタンとキルギスへの遠征も終えた11月末の時点で日本代表が積み重ねている勝ち点の数字を見れば、より明確に見通すことができそうだ。
(取材・文:ショーン・キャロル)
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