前節を上回る守備への関わり
前半23分のことだった。本田はターラブとシンプルにボールを繋いで、カウンターを演出していた。そのボールはやがて前線のカカーに渡るが、後方に折り返したところ相手DFに引っかかり、流れはそれで途切れる。
肝心なのはその次だ。キエーボは縦方向にカウンターを仕掛け、一気にミランの右サイドを深いところまで攻め立てていたが、そこにはもう本田の姿があった。彼は60~70メートルの距離を走ってスペースをカバーし、守備陣に手を貸し、丁寧にボールを繋ぎ直してビルドアップに参与していたのだ。
そんなプレーを、本田はキエーボ戦で90分間繰り返していた。サイドバックやウイングバックであっても、帰陣を意識する事は大変である。しかし本田は前節のフィオレンティーナ戦同様に、いや前節よりももっと激しく精力的に守備に関わっていた。
前節に見せた献身性を持続させながら、チーム2点目のアシストに見るように“10番”の仕事として期待される得点への貢献もしてみせた。自らのゴールを逃したのは残念だったが、また一歩適応を進めたことをアピール出来た、とてもポジティブなパフォーマンスだった。
セードルフ監督はこの試合、DFライン以外はフィオレンティーナ戦の布陣の踏襲を決めた。中2日という悪条件はあったが、コンディション面よりもパフォーマンスの継続性を優先したという事だろう。前節の試合は守備のコンパクトネスが保たれ、相手の攻撃を組織的に封じる事が出来た。
ただ、中盤の守備を優先しようというのなら、出場停止の解けるポーリを使っても良かったわけである。しかしセードルフはそうはせず、再び本田をスタメンに起用。つまりサイドの守備を評価したと共に、「攻撃でも仕事をしてくれ」という期待の表れと言える。