バルサの黄金期で主力に
かつてのキャプテン、ペップ・グアルディオラが監督に就任した08/09シーズン、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、リーガエスパニョーラ、スペイン国王杯(コパ・デル・レイ)の三冠制覇を達成。チームはこの後、黄金期を迎えることになる。
当時のチームにはイニエスタの他、DFカルレス・プジョル、MFシャビ・エルナンデス、GKビクトル・バルデス、FWリオネル・メッシ、DFジェラール・ピケ、MFセルヒオ・ブスケツといったバルセロナのラ・マシア(下部組織)で育った選手たちが主力を務めている。さらに、FWペドロ、FWボージャン・クルキッチ、MFチアゴ・アルカンタラといった若手たちが徐々に出場機会を掴み始めた時期でもあった。
自らも下部組織出身のグアルディオラに率いられたチームは、彼らを中心にポゼッションとショートパスを中心に据えたサッカーで、サッカー界を席巻することとなる。
そのチームの中でイニエスタは、主にシャビとともにインサイドハーフでチャンスメーク役を担った。試合によっては左ウイングをスタートポジションとして、より相手のゴールが近い位置でプレーに関わることも少なくなかった。
悲しみを乗り越えて…
三冠達成の翌シーズン、開幕を間近に控えた2009年8月8日にイニエスタとスペイン全土に悲報が届く。同じバルセロナ州に本拠地を置くエスパニョールの中心選手ダニエル・ハルケが、遠征先のホテルで亡くなっているところを発見された。
世代別スペイン代表でともにプレーし、特に仲が良かったと言われているハルケの突然の訃報。イニエスタの悲しみの深さは推して知るべし、である。
バルセロナがリーグ連覇を果たしたシーズン終了後に行われた南アフリカワールドカップに、イニエスタはスペイン代表として参加。大会直前の負傷で出場が危ぶまれたものの、最終的には7試合中6試合に先発出場している。
オランダ代表と対戦した決勝戦は、スコアレスのまま延長戦へ突入。すると116分、スペインはカウンターから敵陣へ攻め込むと、ボールを受けたイニエスタが右足を振りぬいて決勝点をたたき込んだ。
ゴールを決めたイニエスタは珍しく感情をあらわにして、ユニフォームを脱ぐ。すると、アンダーシャツにはメッセージがしたためられていた。
「ダニ・ハルケ 永遠に僕らと共に」
親友を失った悲しみを胸に、イニエスタはスペイン代表を初のワールドカップ優勝に導いた。
エル・クラシコで見せた衝撃のゴール
26歳で開幕を迎えた10/11シーズンもバルセロナの強さは変わらず。グアルディオラは監督就任から3連覇を達成し、CLでも準決勝で宿敵レアル・マドリーを2戦合計3-1で撃破すると、2季ぶりの決勝では再びマンチェスター・ユナイテッドと対戦。1-1で迎えた54分にイニエスタがメッシのゴールをアシストする活躍もあり、3-1で勝利。イニエスタ自身3度目の戴冠となった。
下部組織出身のルイス・エンリケが監督に就任した14/15シーズンは、盟友シャビが主将に就任。しかし、このシーズン限りで退団することとなるシャビはベンチスタートが多く、イニエスタがキャプテンマークを巻く機会が増加した。
チームはCLで勝ち進むと、ユベントスとの決勝では、イニエスタがラキティッチの先制点をアシスト。イニエスタはCL決勝で3試合連続アシストを記録し、4度目のCL制覇に貢献した。
08/09のCL準決勝チェルシー戦、南アフリカワールドカップ決勝のゴール、そしてCL決勝では3試合連続アシストと、イニエスタは大舞台でチームを救い続けてきた。
翌シーズン、イニエスタは退団したシャビに代わり、第1主将に就任。2015年11月21日には、レアル・マドリーとのエル・クラシコが行われた。スアレスのゴールで先制したバルセロナは39分、イニエスタが中盤でボールを持つと、右足アウトサイドでネイマールにボールを送り、追加点をアシストした。
さらに53分、イニエスタが縦パスを送ると、ネイマールがこれをヒールで落とす。これに走り込んだイニエスタが豪快に右足を振りぬくと、ボールはゴールへと突き刺さった。
その後、スアレスの得点が決まり、イニエスタは77分に交代。1ゴール1アシストでチームを勝利に導いたイニエスタがピッチを去る際には、スタンディングオベーションが起きた。
バルサでのキャリアの終焉
イニエスタは2017年、バルセロナではシャビに次ぐ史上2人目となるリーグ戦400試合出場を記録し、名実ともにバルセロナの歴史に名を残す選手となった。バルセロナは2017年10月6日に、イニエスタとの契約延長を発表。契約期間は「イニエスタが望むだけ」。事実上の「生涯契約」が結ばれた。
国内では数多くのタイトルを獲得してバルセロナだったが、5度目のCL優勝になかなか手が届かず。15/16シーズンはアトレティコ・マドリー、16/17はユベントス、17/18はローマに敗れ、3季連続してベスト8に終わっている。
17/18シーズン、バルセロナは国王杯で4連覇を達成。リーグ戦でも首位を走る最中、4月27日にイニエスタは記者会見を開き、このシーズン限りでのバルセロナ退団を発表した。
このシーズン、バルセロナはリーグ戦と国王杯の国内二冠を達成。イニエスタはバルセロナのトップチームで過ごした16シーズンで、リーグ戦を9度、国王杯を6度、そしてCLを4度制覇。スーパーカップなどを含めると、32個のメジャータイトルをバルセロナにもたらした。
日本で見せる圧巻のパフォーマンス
バルセロナ退団後の昨夏、イニエスタはヴィッセル神戸に加入。Jリーグ3戦目となったジュビロ磐田戦、15分にペナルティーエリア内でパスを受けると、華麗な反転でDFをかわしてJリーグ初得点をマークした。
2018年は14試合に出場し、3得点3アシストを記録。バルセロナでシーズンを戦い、ロシアワールドカップにも出場した後にもかかわらず、圧巻のパフォーマンスを見せた。
今シーズンは、バルセロナやスペイン代表で長くともにプレーしたFWダビド・ビジャがチームに加入。イニエスタは4月に主将に就任すると、怪我から復帰した6月15日のFC東京戦で衝撃のゴールが生まれる。左サイドのペナルティーエリア内でボールを受けたイニエスタは、クロスボールを上げると思いきやニアサイドにシュートを決めた。
さらに、30日の名古屋グランパスで、相手GKのパンチングを拾ったイニエスタは、ペナルティーエリアの外から右足を振りぬく。コースを狙ったシュートはGKが伸ばした手に届かず、ゴールネットに吸い込まれた。
その7分後にPKを決めたイニエスタはJリーグでは初の1試合2得点をマーク。針の穴をも通すキックの精度や的確な判断は、35歳を迎えたシーズンでも衰えを知らず。随所に高いパフォーマンスを披露している。
(文:編集部)
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