ノーゴールは「情けなかったし、苦しかった」
いろいろな声が耳に届いてきた。たとえば横浜F・マリノスのチームメイトたちは、下部組織から昇格して4年目になる東京五輪世代のホープ、21歳の遠藤渓太にこんな言葉をかけ続けた。
「いつゴールを決めるの」
褒められた直後に物足りなさを指摘する声が、左ウイングで先発フル出場を積み重ね、プレー時間が増えていくにしたがって、ファン・サポーターの間で強まっていることもひしひしと感じていた。
「遠藤っていいけど、でも点を取れないよね」
図星だった。数字を見れば、言い返すことができなかった。いつしか相手ゴール前でシュートチャンスを迎えるたびに、同じフレーズが自分の心のなかで繰り返されるようになった。
「力むな。力んだらダメだ」
頭では理解していても、ボールをインパクトする刹那になると無意識のうちに力が入ってしまう。ゆえにシュートがゴールの枠をとらえられない。あるいは、相手キーパーの守備範囲へ飛んでしまう。そのたびに天を仰ぎ続けた胸中を、遠藤は神妙な表情を浮かべながら振り返っている。
「ここまで試合に出ながらノーゴールというのはすごく情けなかったし、苦しかった。それでも全部が全部、人生が思い通りにいくわけがないと思ったこともあります。いろいろな葛藤を抱えながらプレーしていたというか、正直、難しい時期をすごしてきました」