ブラジル代表が12年ぶり9度目のコパ・アメリカ制覇【写真:Getty Images】
コパ・アメリカ2019(南米選手権)は現地7日に決勝が行われ、ペルー代表を3-1で破ったブラジル代表の優勝で幕を閉じた。
決勝には5万8584人が来場。入場料収入は3876万9850レアル(約11億円)を記録し、開催国の優勝という形で盛況に終わった。しかし、7万8000人以上を収容するマラカナン・スタジアムは満員にならず、決勝にはチケット代を支払っていない招待客が約1万1000人いたこともわかっている。
大きな原因の1つは高すぎるチケットの料金設定にある。例えば決勝で最も安い価格の大人チケットは120レアル(約3400円)で、最も高額なチケットは890(約2万5000円)だったという。また、大会を通じて最安の大人チケットは60レアル(約1700円)だったが、これはブラジル国内の人気クラブの安価な席種に比べて2倍以上の額だ。
約1億3000万人の失業者を抱えるブラジルにおいて、コパ・アメリカのチケット代は高すぎた。大会側は2015年のチリ大会に比べて10%の値上げにとどまっていると主張しているものの、結局は中流・上流階級の人々にしか手の届かないものとなってしまっていた。
大会を通じて空席が目立ったのも、そのためだろう。グループリーグでは全18試合中7試合で観客動員が2万人を下回り、1万人に満たない試合も。全試合で最も観客が少なかったのは最終節の日本対エクアドルで、7623人だった。
決勝トーナメントに入っても、準々決勝のウルグアイ対チリや準決勝のチリ対ペルーは、中継映像を見るだけでもかなりの空席が目立った。にもかかわらず、ファンはチケット受け取りのためにスタジアムから離れた場所へ出向かなければならないケースもあり、オペレーションの未熟さも手伝って大行列が発生。そこから試合開始に間に合わなかった人々も多くいたようだ。
運営のずさんさは他の場面でも目立った。例えばメディア関連でいえば、記者席や記者会見場、ミックスゾーン(選手取材エリア)への入場を整理するチケットが事前登録制になっていたものの、その情報が大会取材パスを持っている記者全員に配信されておらずグループリーグ序盤から大きな混乱をきたしていた。
事前申請がなければ待機リストに名前を書いて、試合開始2時間前からチケットが余っていれば受け取れる仕組みだったが、ブラジル対ボリビアの開幕戦では担当者が名前を読み上げる方式で、受け取り窓口は大混乱。狭いスペースに人が入り乱れてカオス状態になっていた。徐々に洗練されていったが、最後まで最適な方法を見出せていないようだった。
各会場では毎試合のようにメディアのオペレーションがコロコロと変わり、事前告知のないルールを理由の説明なしに押しつけられる、前回は問題なかったものが次回はダメになっているなど、大小様々なストレスは絶えなかった。
また、スタジアム周辺の交通規制も事前に十分な周知がなされておらず、遅い時間に開始の試合では帰宅ラッシュと重なって、必ずと言っていいほど大渋滞が発生。地元警察が事前の交通規制の外側で独自に規制を張っている試合もあり、それによって渋滞がより悪化する例も見られた。
サンパウロ郊外のアレーナ・コリンチャンスで行われた準々決勝のコロンビア対チリでは、警察の先導があるにもかかわらず、チリ代表のチームバスがその交通規制や帰宅ラッシュによって発生した渋滞に巻き込まれて抜け出せなくなりスタジアム到着が大幅に遅れた。それによって試合開始が20分後ろ倒しされるというトラブルもあった。
各会場のピッチ状態はとてもいいとは言えず、決勝をはじめ多くの試合で前日の公式練習を試合会場のピッチで行えない。度々話題になって各チームの選手や監督から不満が続出したVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の運用。さらには一部の練習会場でシャワーからお湯が出ないなど、大小さまざまな問題が絶えなかったコパ・アメリカ。
ブラジルらしいファンの情熱や、コロンビアやチリ、ウルグアイ、アルゼンチンなど各国のサポーターたちが作りだした熱狂、ピッチ上で繰り広げられたクオリティの高いサッカーなど、南米の頂点を決める戦いにふさわしい素晴らしい面も多く見られた。
一般のブラジルの人々は非常に親切で、我々のような日本から来た外国人でも快く受け入れてくれた。治安面の不安こそあったものの、サッカーやその他のスポーツに傾ける熱意の大きさも実感した。それだけにずさんさやトラブルが目立ってしまったのは残念なところだ。コパ・アメリカは来年も開催される。次はアルゼンチンとコロンビアの共催となるが、今大会で出た課題が解決されることに期待したい。
(取材・文:舩木渉【コパ・アメリカ】)
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