ブラジル代表のチッチ監督【写真:Getty Images】
ブラジル代表が12年ぶり9回目の南米制覇を成し遂げた。現地7日に行われたコパ・アメリカ2019(南米選手権)決勝でペルー代表に3-1で勝利を収め、聖地マラカナンでホームのサポーターとともに歓喜に沸いた。
試合と表彰式などが終わった後、記者会見に現れたブラジル代表のチッチ監督は孫を抱いていた。
「今日、やっとセレソンの監督になれた。シンボリックな場所で。フットボールの聖地で。想像をはるかに超えていた。この幸せを言い換えて表す言葉が私にはない」
前日の3位決定戦で退場を宣告されたリオネル・メッシの「汚職に与したくない」発言や、決勝でのガブリエル・ジェズスの退場、表彰式での“無視”が注目されたジャイル・ボルソナロ大統領との関係性などに話題が及ぶ中、それらにも真摯に答えていったチッチ監督。
ただ、やはりと言うべきかタイトル獲得について問われると、「私は喜びを分かち合うことに大きな満足を感じている」と強い思いが溢れてきた。
「私は批判してくる人を、自分に反対する者だとは見なさない。それは成長のための民主的なプロセスであって、私にとって名誉なことだと思っている。ただ意見が違うだけだ。勝つためにはたくさんの方法がある。我々が好むのは、自分たちのサッカーのアイディアに忠実であること。一貫性があり、結果を追求し、創造性を放棄することなく、そのプロセスをゴールに繋げる。今日の後半は、一貫性があったと思う」
2016年に就任して以降、大舞台でなかなか結果が出ずに苦しんできた。昨年のロシアワールドカップもベスト8でベルギー代表相手に敗れ、強烈な批判の的に。今大会中も、もし準決勝のアルゼンチン戦に敗れれば解任もあるのではないかと囁かれた。しかし、優勝後の表彰式ではブラジルサッカー連盟の会長と熱い抱擁とキスを交わし、信頼関係が損なわれていないことが確認されている。
チッチ監督の言葉は行動には、人を惹きつける威厳や品格がある。ピッチ上では厳格だが、記者会見などメディアへの対応も非常に真摯で、ファンへの対応も怠らない。言葉の節々に力強さがあり、発言にも自分なりの論理と説得力がある。抜群のリーダーシップと指導力を発揮した指揮官は、個性的なスター揃いのチームをまとめ上げ、ついに南米の頂点に立った。
次なる戦いの場はカタールワールドカップ出場に向けた南米予選と、来年コロンビアとアルゼンチン共催で行われるコパ・アメリカだ。
(取材・文:舩木渉【ブラジル】)
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