日本対エクアドルは約5万8000人収容のスタジアムに約7600人しか入らず…【写真:Getty Images】
コパ・アメリカ2019(南米選手権)はグループリーグの全日程を終え、27日からは8ヶ国による決勝トーナメントへと突入する。
27日のブラジル対パラグアイを皮切りに、28日にはベネズエラ対アルゼンチンとコロンビア対チリ、29日にウルグアイ対ペルーが行われる。いよいよ負けたら終わりの一発勝負だ。
だが、開催国ブラジルはとてもコパ・アメリカ開催中とは思えないほど平穏だ。確かに各都市の空港やスポーツ量販店などに赴くと出場国のユニフォームや大会グッズが販売されてはいるものの、お祭りムードは一切ない。
サンバカーニバルが有名で、お祭り好きな国だと知っていたので相当な盛り上がりを期待して現地入りしてから拍子抜けな日々が続いている。もちろんサッカーは国民的スポーツなので、「コパ・アメリカ」と言えば知らない人はいないくらいだが、街中を歩いていても特別な雰囲気は感じないし、試合開催日に社会活動がストップするような光景も未だに見られていない。
観客動員数も大会への熱量の低さを物語る。開幕戦となったブラジル対ボリビアを取材した際、会場に集まったのは4万7260人と発表された。サンパウロの歴史あるモルンビー・スタジアムでの試合だったため、ブラジルサポーターで満員になると予想していたが、実際は約6万7000人を収容するスタジアムに空席が目立った。
もちろんブラジルの試合は毎回4万人を超える観客動員を記録しているが、現時点で4万人以上を集めたのは18試合中5試合だけ。そのうち3試合がブラジル絡みで、最多動員はリオデジャネイロの聖地マラカナン・スタジアムで開催されたチリ対ウルグアイの5万7442人だった。それでも映像を見る限りでは約7万5000人を収容する会場には空席が目についた。
実際のところ、観客動員1万人を割った試合もある。今大会最少は日本対エクアドルの7623人で、その2日前に同じ会場で行われたボリビア対ベネズエラも8091人と、ベロオリゾンチのエスタディオ・ミネイロンは空席だらけ。両試合とも現地で取材したが、スタジアム内の様子に虚しさすら感じた。
特に日本対エクアドルは試合直前までスタンドにほとんど観客がおらず、さながら無観客試合のような様相に。徐々に人は増えたが、少数のエクアドルサポーター以外は招待された団体客のような集団が大半を占めていたようだった。
地元のブラジル人の大半は、普段と変わらない日常生活を送っている。サッカーを愛していながら、コパ・アメリカの観戦には自国の代表を除いてほとんど関心を示していないと言っても過言ではないだろう。開幕戦前日に行われたリーグ戦のパルメイラス対アヴァイーは平日にもかかわらず3万1946人を集めていたから、国内リーグへの関心の方が高いこともうかがえる。
他にも例を挙げると、コパ・アメリカの試合開催日はスタジアム周辺に交通規制が敷かれるが、それすらほとんど周知されていないようで、毎回そのことを知らない帰宅ラッシュの一般車が殺到して大渋滞が発生している。日常と非日常が交差する象徴的な光景だった。
果たして決勝トーナメントに入って、開催国の盛り上がりは加速するだろうか。現時点では周辺国からやってくるアウェイサポーターに支えられている状態。ブラジル代表が敗退すればさらに深刻になりかねないが、サッカー大国ブラジルの秘めたる情熱の解放に期待したい。
(取材・文:舩木渉【ブラジル】)
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