「予選突破ができるかどうかではなく『する』」
コパ・アメリカでの森保ジャパンのチャレンジが終焉を迎えるのか、それとも先まで続くのか…。現地時間24日のグループステージ最終戦・エクアドル戦はまさに生きるか死ぬかの大一番。ここまでの他グループの結果によって、日本は勝てば8強入りできる状況になった。2位通過の可能性もわずかに残るが、事実上3位の座をエクアドルと争うことになる。その意地と意地のぶつかり合いに負けるわけにはいかない。
「予選突破ができるかどうかではなく『する』という気持ちで全員がやっていますし、チーム全員で戦って勝利を勝ち取りたい」と前日会見に登壇した植田直通もチームの思いを代弁していた。
メンバーは森保一監督が「(20日の)ウルグアイ戦をベースにする」と語った通り、川島永嗣、岡崎慎司、柴崎岳ら実績あるメンバーが軸を担うだろう。トップ下は前回の安部裕葵に代わって18歳の久保建英がスタメンに名を連ねそうだ。経験豊富な面々の後押しを受け、久保はより自分の持てる力を発揮しやすくなるはずだ。
勝つためには攻めも大事だが、手堅い守備も重要になる。とりわけ、ここまで2戦6失点という不本意な数字は見逃せない。これ以上失点を重ねることは許されない。そこは植田や冨安健洋らも重々承知している点。今回こそはエネル・バレンシアら相手アタッカー陣を跳ね返し続けてくれるだろう。
キーマンになる柴崎岳
こうした攻守のつなぎ役となるのが、キャプテンマークを巻く柴崎だ。ここまで2戦フル出場を果たし、ウルグアイ戦では三好康児の先制点をお膳立てする絶妙のサイドチェンジを出し、危ない場面では要所要所で的確なカバーリングやボール奪取を披露。中盤でまばゆいばかりの輝きを放った。
その存在感の大きさは、2018年のロシアワールドカップまで8年間キャプテンを務めた長谷部誠を彷彿させるものがあった。
現代表の大黒柱への森保監督の信頼は誰もが認めるところ。実際、21、22日のベロオリゾンテ市内での公開練習では、2日続けて長時間の「トップ会談」が行われ、代表の現在地について活発な意見交換がなされた模様だ。
「ピッチでやってる中で感じ取れることと、監督が感じることはちょっと違うでしょうし、そのすり合わせはできていると思います。監督の考えをピッチで表現するのは僕らの仕事。自分自身はこの2戦で出してきたパフォーマンスを継続することが重要だと思ってます。メンタル的にも一喜一憂せず、続けていくことが大事かなと感じています」と柴崎は落ち着いた様子でコメント。森保サッカーの具現者として、エクアドル戦でもチームをしっかりと牽引していく覚悟を示した。
エクアドル戦の彼に託されるのは、攻撃と守備のバランスを取り、チーム全体を確実にコントロールすることだ。ボランチのパートナーである板倉滉と2試合連続でコンビ結成されれば、前回よりはプレーしやすくなるだろう。
その2人が中心となってエクアドルに揺さぶりをかけ、相手のスペースを見極めながら攻撃を組み立てていけば、どこかでウルグアイ戦の得点シーンのような好機が訪れる。それを逃さず仕留めて先制点を奪うこと。卓越した戦術眼を持つ柴崎がそういった展開に誘導できれば理想的だ。
ブラジル戦は千載一遇のチャンス
しかし、逆にチリ戦のように劣勢に陥るケースも想定される。その場合でもチーム全体が焦らず、粘り強く戦えるように仕向けていくことも背番号7の重要な仕事。彼が背負うものはやはり少なくないのだ。
この関門を乗り越えられるか否かによって、日本代表と彼自身の今後も大きく変化する。というのも、3位通過した場合、次戦の相手はホスト国・ブラジルだからだ。
日本は2013年のコンフェデレーションズカップでも開幕戦で王国に挑んではいるが、本田圭佑や香川真司ら当時のトップ選手でぶつかっても0-3と全く歯が立たなかった。ただ、世界トップの強豪と相手のホームで戦う経験値は必ず飛躍の糧になる。U-22世代中心の今回の日本がその挑戦権を得られれば、選手たちの伸びしろは大きくなるだろう。
そして柴崎も1プレーヤーとしてもう一段階上のステップに踏み出せる。今の彼は所属のヘタフェより出番の増える新天地を探さなければいけない立場。そういう意味でもブラジルというビッグネームとの対戦は千載一遇のチャンスなのだ。
柴崎岳は「底力を発揮する選手」
これまでの柴崎を振り返ってみると、鹿島アントラーズ時代の2016年のFIFAクラブワールドカップでレアル・マドリー相手に2ゴールをマークしたり、ヘタフェ1年目の2017年9月のバルセロナ戦で衝撃弾を決めるなど「大物食い」を繰り返してきた。
ロシアワールドカップや今大会のパフォーマンスからも分かる通り、「大舞台や相手が強くなればなるほど底力を発揮する選手」という強みがある。となれば、ブラジル戦も大いに期待できそうだ。そのピッチに立つためにも、まずはエクアドルに確実に勝利し、8強の1枠に滑り込むこと。そこから始めなければならない。
2月1日のアジアカップ決勝・カタール戦では入りのミスからタイトルを逃すという不完全燃焼な終わり方をした柴崎には、エクアドル戦をどう戦うべきかが見えているはず。それを今こそピッチ上で表現し、南米での国際大会初勝利という未知なる領域へをチームを導くこと。それを果たしてこそ、彼は真のリーダーになれる。森保監督の信頼に報いるためにも、ここは結果を残すしかない。
(取材・文:元川悦子【ベロオリゾンテ】)
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