絶対に点を取って勝たないといけない大一番
ここまで2試合を終えて1分1敗・勝ち点1でコパ・アメリカグループCの3位につけている日本。ベスト8に入ろうと思うなら、24日のエクアドル戦で勝利するしかない。
他グループの状況にもよるが、22日に行われたグループA最終戦でペルーがブラジルに0-5と大敗し、勝ち点4・得失点差-3の3位になったことで、日本の生き残り確率が少し上がってきた。だからこそ、何とか白星を拾って南米大陸での南米勢初勝利を飾り、先への道筋をつけたいところ。そのために森保一監督と選手たちは今、結束力を高めている。
エクアドルとの決戦を2日後に控えた22日。日本代表は午後、ベロオリゾンテ郊外の練習場でトレーニングを行った。当初は非公開の予定だったが、現地在住日本人との交流が行われたこともあり、急きょ全公開に切り替えた。
ただ、20日のウルグアイ戦の先発組はこの日もクールダウンに努め、実戦形式には参加しなかった。それ以外の久保建英らは6対6のミニゲームなどをこなしたが、過密日程ということで時間は短め。この時点では大一番のスタメンは流動的なようだ。
とはいえ、絶対に点を取って勝たなければいけない一戦だけに、アタッカー陣は決定力のある顔ぶれを並べなければならない。ウルグアイ戦で2ゴールをマークした三好康児の連続スタメンはもちろんのこと、17日のチリ戦で巧みなドリブル突破からゴールまであと一歩と迫った久保、A代表でも10番をつけてきた中島翔哉は外せないだろう。
1トップは岡崎慎司が連続先発すると見られるが、いずれにしても、彼らのいずれかが得点を奪うことがグループ突破の近道になるのは間違いない。
「こういった舞台で得点を取れたことは自信にもなるし、勢いを持って次の試合に向かっていけるのはプラスだと思います。ただ、これを続けなければ意味がない。1試合で終わったら意味ないので、自信を確信に変えるのは自分次第。そこが大事かなと思っています」と三好が語気を強めたように、日本の命運が決まる一戦でアタッカー陣の誰が結果を残すのか。そこは大きな注目点だ。
久保建英にとってエクアドル戦が持つ意味
今回、目に見える大仕事をした選手が1年後に迫った2020年東京五輪本番、あるいは2022年カタールワールドカップに生き残るチャンスを得る。エクアドル戦はその試金石になると言っても過言ではない。
実際、森保ジャパン発足以降、攻撃陣のサバイバルは熾烈を極めている。1トップに関しては大迫勇也の存在価値が頭抜けているものの、2列目の激戦ぶりは過去の代表にも見られなかったほどだ。今回は左の中島、トップ下の久保と安部裕葵、右の前田大然と三好が過去2戦でスタメン出場。三好がゴールという結果を残し、一歩リードした状態だ。
しかしながら、A代表なれば、左に原口元気と乾貴士、トップ下に香川真司と南野拓実、右に堂安律と伊東純也という人材がいて、三好はおろか、18歳ですでにA代表3戦出場を記録した久保でさえも先々の保証があるとは言い切れない状況だ。
「自分と同じようなポジションの選手(三好)が点を決めるということは、チームにとっては点が入ったので歓迎することだと思います。自分も先を越されてしまいましたけど、チームを救ったヒーローだと思います。次の試合にそれが誰になるか分からないけど、自分たちにとって本当に価値あるゴールだったと思います」と久保は4つ年上の三好に対して最大限のリスペクトを口にしたが、まだ得点にも絡めず、勝利の原動力にもなれていない自分自身に多少なりとも焦りはあるはず。
スタメン復帰が有力視されるエクアドル戦で潜在能力の高さを遺憾なく発揮し、チームを勝たせることができれば、彼の序列は一気に上がる。それが一度はデビューした真のA代表定着の布石にもなることを、賢い若武者はよく分かっているはず。だからこそ、久保にとってのエクアドル戦の意味合いは大きくなるのだ。
ゴールに直結した働きを見せるためには?
「エクアドルは今までで一番やりづらい相手になるのかなと。身体能力も高いですし、他のチームよりアバウトにやってくるところもあると思うので、自分たちの対応力が求められる」と川島永嗣も警戒心を募らせていたが、ここまで勝ち点0の最下位に沈むチームといっても南米をホームとする国。招待国の日本に負けてはいられない。レアル・マドリー移籍が決まったばかりの久保を狙いうちにしてくる可能性も否定できない。
そこでボールを奪われ、カウンターの餌食になるようでは、先々のA代表定着も、1年後のレアルのトップ昇格も現実にはならない。ウルグアイ相手に1試合2ゴールをマークした三好以上の存在価値をしっかりと示すことが肝心だ。
相手がプレスをかけてきた時にはいなし、逆に下がった時には思い切ってフィニッシュに出るような巧みな駆け引きや状況判断という彼らしい強みを出せれば、必ずやゴールに直結する仕事ができるだろう。
長友佑都が「ドラえもんみたいに引き出しが多い選手」と評したほどの柔軟性と臨機応変さを併せ持つ久保ならば、エクアドル守備陣を切り裂き、日本の8強入りの原動力になれるはず。
もちろん彼だけでなく三好も中島もこれまで以上に輝いてくれれば、A代表で実績を積み重ねてきた先輩たちにプレッシャーをかけられる。そういう流れを加速させられるような、東京五輪世代2列目アタッカー陣の躍動を、この大一番ではぜひ見たい。
(取材・文:元川悦子【ベロオリゾンテ】)
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