指揮官は“教授”
東京五輪世代が中心の”ヤング森保ジャパン”にとって最初にして最大級の難関となるのがチリだ。2015年の自国開催のコパ・アメリカ、そして2016年のコパ・アメリカ・センテナリオと2連覇中だが、ロシアワールドカップ南米予選でまさかの失速をして、前年のコンフェデレーションズカップで準優勝しながら予選敗退という屈辱を味わった。
再建を託されたのが経験豊富なコロンビア人のレイナルド・ルエダ。選手としてプロ経験はないが、ドイツのケルンでスポーツ学位を習得し、欧州サッカーにも通じる“教授”は2003年のワールドユース(現・U-20ワールドカップ)でコロンビアを3位に躍進させて名を上げると、A代表を率いるも予選敗退。しかし、ホンジュラスの代表として同国を28年ぶりとなる南アフリカワールドカップの本大会に導いた。
さらにブラジルワールドカップではエクアドル代表を率いた経験豊富な指揮官は、チリの伝統となりつつあるハードワークをベースとしながらも、堅実な守備をベースにボールを持てば自分たちからアクションを起こすというハイブリットな戦術を好む。
パッと見で目新しさはないが、ディテールで選手が納得するまで説明する理論と熱心さは南米の中では真面目な気質があるチリにとって適任と言えるかもしれない。
気鋭の戦士たち
昨年の9月に北海道で“森保ジャパン”の初陣として対戦する予定だったが、大地震の影響で実現しなかった。今年3月の親善試合ではメキシコに1-3で敗れ、アメリカと1-1の引き分けに終わったが、複数のフォーメーションをテストするなど、ルエダ監督がチリの戦力を見極めるには良い機会になったようだ。直近の試合は6月7日にホームで行われ、ハイチに2-1で勝利している。
闘争本能をむき出しにした守備が売りのガリー・メデルや左サイドからの巧妙な攻め上がりが特徴のジャン・ボーセジュール、攻守のバランス感覚に優れた右サイドバックのマウリシオ・イスラ、そしてチリの心臓であるアルトゥーロ・ビダルといった従来の主力に乾貴士の同僚である193cmの巨漢センターバックのギジェルモ・マリパン、セリエAのボローニャでプレーするハイスケールなMFエリック・プルガルと言った気鋭の戦士を加えた。
出場が危ぶまれたエースは…
心配されたのはエースのアレクシス・サンチェスだ。プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに所属するFWは5月5日のハダーズフィールド戦で右足首を負傷するとクラブのメディカルスタッフから治療を受けたが、その際に医療器具の鋭利な部分で生じた裂傷から感染症を引き起こしてしまったというのだ。
ハイチ戦を欠場し、大会参加も不安視されたが、その後の練習に復帰。母国のメディアによれば現在はフルメニューを消化できているという。2018/19シーズンのリーグ戦では絶不調に陥ったサンチェスだけに、もはや自分の庭とも言えるコパ・アメリカでの活躍に期するものはあるだろう。
そのチリは初戦の2週間前から強化を進め、日本より数日早くブラジル現地に入って準備を進めている。
主力の平均年齢の高さが不安視される部分もあるが、日本との初戦ではかなり高い強度でハードな戦いに持ち込んでくるはず。フォーメーションで最も可能性が高いのはビダルをトップ下に配置する4-2-3-1だが、中盤をダイヤモンド型にした4-4-2も考えられる。
いずれにしても流れや時間帯に応じてポジションを変えてくるので、“臨機応変”を掲げる森保監督はもちろん、ピッチ上の選手たちにも柔軟な対応力が求められそうだ。
(文・河治良幸)
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