「ネイマールはめられた説」が大半の意見に
日本でもすでに大々的に報道されている、ネイマールの婦女暴行事件。
インスタグラム上で知り合ったブラジル人女性に暴行したとして、女性側から訴えられている。
こんな大スターと直接やりとりができて、飛行機のチケットが送られてきて、ホテルで密会できてしまうなんて、SNSってすごいな! と、まずそこで驚きだったが、フランスでのこの件についての報道は客観的だ。
元レキップ紙の記者で、現在はカナル・プリュスのご意見番であるピエール・メネーズ氏も、『スクラブル(ボードゲーム)で遊ぶとか、一杯やるためだけに8時間も飛行機に乗ってきたわけじゃあるまいし…。これまでもフットボール界でさんざん見てきたような結末になるんだろう』、「ネイマールはめられた説」をほのめかすツイートしていたが、大半の人は同じように感じているようで、関心事はむしろこの件が及ぼす影響だ。
ネイマールが所属するパリ・サンジェルマンを有するカタールは、自国のイメージ向上のために、フランスの首都クラブを手に入れた。そして、クラブの看板プレーヤーになってもらうべく、大枚をはたいてこの世界的大スターを連れてきた。
しかしその彼が、ピッチ上では初年度も、そして昨シーズンも、シーズン佳境の大事な時期に怪我をして活躍できず。代わりに話題になるのは、負傷欠場中にナイトクラブで騒いでいたとか、相手サポーターを殴ったとか、今回のようなスキャンダルばかり。
ネイマールはPSGで情熱を失った?
ジャーナリストのダニエル・リオロも、そういった声を代表して、担当するRMCスポーツのラジオ番組内で『才能があるからと言ってすべてが許されるわけではない。彼は実際、PSGに来てからクラブのために何をしたというのか? クラブの成功のためには、全員が同じ方向に向かって取り組む必要があるというのに…』と苦言を呈した。
(リオロは相手の女性に対しても侮辱発言をして、炎上騒ぎになったのだが…)
この意見には、「ネイマール級のスターがきたことでリーグ・アンの株が上がった」「実際にテレビ放映権料も上昇した」「彼がプレーするならお金を払ってでも見に行きたいと思える」といった、ネイマール擁護のコメントも多く見られたが、実はネイマール本人もPSGで情熱を失いかけている、と報じたのは6月9日放送のTF1のフットボール情報番組『TELEFOOT』だ。
”番組が得た情報”と曖昧な感じではあるが、「ネイマールはすでにPSGのプロジェクトには以前のような魅力を感じなくなってきていて、ここ数週間、真剣に移籍を考え始めているようだ」と。
それに輪をかけているのが、PSGの現テクニカル・ダイレクターのアンテロ・エンリケの解任が秒読みである件だ。
ネイマールの獲得に尽力したのはエンリケであり、ポルトガル人で言葉の通じるエンリケとネイマールは近しい関係だったと言われているから、エンリケがPSGを去ることが、ネイマールの決断に拍車をかけるという見方をする向きも多い。
エンリケの後任候補はあの人物?
エンリケの後任候補として、ほぼ確定、とされているのがレオナルド。
レオナルドは、2011年にカタールがPSGの実権を握ってすぐにテクニカル・ダイレクターとして招かれ、新生PSGの立ち上げに携わった人物で、幅広い人脈を生かして、カルロ・アンチェロッティ監督の招聘や、チアゴ・シウバ、ズラタン・イブラヒモビッチ、デヴィッド・ベッカムら、数々のビッグネーム獲得を実現した。
昨シーズンもチャンピオンズリーグでラウンド16止まり、と、行きづまり感のあるPSGに対し、カタール陣営は抜本的な改革を進める気でいるが、レオナルドを呼び戻すことはその主軸であり、会長補佐役といった、テクニカル・ダイレクター以上の実権を与えられるとも噂されている。
そしてその場合は、レオナルドにとって復帰後の初任務は、「ネイマール引き止め工作」になるとも…。
コパ・アメリカ出場のためにブラジル代表に帯同していたネイマールは、テストマッチのカタール戦で右足首を負傷。PSGのメディカルチームがブラジルに飛んで診断したところ、右足首の靭帯損傷で、手術の必要はないが、完治までは4週間との結果がクラブから正式発表された。
ちょうどプレシーズンに入る頃には復帰できそうではあるが、それまでの間も、ネイマールの話題はメディアを賑わすことになりそうだ。
(文:小川由紀子【パリ】)
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