「最初の1~2週間は(おかしな点には)何も気づかなかった」
どこまでも青い空とエーゲ海、そこに浮かぶ白い雲と島、そして古代遺跡。最近で言えば財政破綻という言葉も当てはまるかもしれないが、ギリシャと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、こんなイメージではないだろうか。
ブラジルW杯での対戦が決まり、日本のギリシャに対する関心は急激に高まっている。そこで今回、第2戦で当たるギリシャを知るにあたり、最適な人物に話を聞いた。
かつてギリシャのアリス・テッサロニキでプレーした、坂田大輔(現アビスパ福岡)である。ピッチ内外での経験談は、なかなか見えてこないギリシャの一側面を浮かび上がらせてくれる。
2011年初頭、坂田はギリシャに渡る。ギリシャ文字を読むことさえ困難だったが、風景の美しさは説明不要だった。当初の投宿先となったホテルも美麗な造りで坂田を魅了した。
同年1月のギリシャは、国債の暴落で世界の株価や共通通貨ユーロの下落を招くなど、世界的不況の発信地として問題視されるほどに財政が悪化していた。目に映る美しさとは裏腹に、危険な状況が続いていたが、坂田自身は「最初の1~2週間は(おかしな点には)何も気づかなかった」という。
坂田が移籍したアリスの本拠地テッサロニキはギリシャ第2の都市だ。人口はアテネの約半分の32万人と、他国の大都市と比べても規模はそれほど大きくはない。街の雰囲気も大都会アテネとは随分と違ったようで、首都で繰り広げられている市民の抗議活動も、坂田にとっては世界中の人々と同じくテレビの向こう側の出来事だった。
だが、街中のマンションで暮らし始めてから、ギリシャの「日常」が見えてきたという。
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