「100パーセントの状態ではなかった」ものの
“再生”が始まっている。3月10日、淡いピンク色の夕暮れが優しく包むボルポラス海峡、そのほとりに佇むボーダフォン・アリーナーー。
辺りはすっかり漆黒の闇に覆われた、後半のアディショナルタイムのことだった。左サイドの高い位置で、アドリアーノとの連動でボールを奪った香川真司。
「良い形でアドリ(アドリアーノ)がボールを奪って、前を見た瞬間、最初、中にもね、ブラク(イルマズ)がいたのでパスも考えましたけど、ドリブルした瞬間に、いい視野に入れた」
視界が開けた。ペナルティエリア内に突き進むと、ためらわず左足を振り抜く。ボールは敵のGKセルカン・キリンティリの股の下を射抜いて、サイドネットを揺らした。諦めかけた歓喜が爆発するアリーナ。湧き踊るアドレナリン。背番号23は、悠然とコーナーフラッグに向かって走った。
スュペル・リグ第25節、対コンヤスポル戦。香川真司に出場機会が巡ってきたのは75分のことだ。先制点を決めたアデム・リャイッチに代わり、トップ下で出場。背番号23は「100パーセントの状態ではなかった」という。
「正直、怪我をしていたので、ちょっとやはり100パーセントの状態ではなかった。なので、ちょうどこのぐらいの時間かなあっていうのは予測していました」
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