スピードの変化
「映像を見ないとわかりにくいんですけど」
仲川輝人はエジガル・ジュニオへのアシストについて、そう話し始めた。前半39分、横浜F・マリノスの2点目。このゴールは、ベガルタ仙台に2-1で勝利した勝ち越し点となっている。
右サイドで三好康児がドリブル、その内側を仲川が駆け抜けていく。昨季から横浜FMが繰り返し使っているインナーラップだ。ペナルティーエリア内右で三好からのパスを受けた仲川が振り向きざまにDFとGKの間へ速いクロスボールを入れ、エジガル・ジュニオが至近距離から押し込んでいる。
仲川が「映像を見ないとわかりにくい」と言ったのは、三好を追い越していくときのランニング・スピードの変化についてだった。
「(三好)康児を追い抜くまでは70パーセントぐらいで、パスを出せるタイミングで100パーセントに上げています。一瞬、マークしているボランチをはがせたので、あのクロスへつながった」(仲川)
右のタッチライン際から斜めにドリブルしている三好に対して、仲川は「くの字」を描くように縦へ飛び出している。飛び出した瞬間、マークしていたシマオ・マテを置き去りにしていた。横浜FMはインナーラップを多用し、サイドバック、インサイドハーフ、ウイングが繰り返し走り込む。もはやトレードマークといえる攻め手なので、対戦相手も警戒しているのは間違いない。それでも成功させているのは、仲川の言うスピードの変化や走るコースどり、タイミングの妙があるからだ。
ただ、映像を見てもスピードの変化はそれほどよくわからなかった。「70パーセント」の段階ですでに速いのだ。