興味深い東京Vの育成費による収益構造
高橋祥平(→大宮)、和田拓也(→仙台)、梶川諒太(→湘南)、阿部拓馬(→アーレン/ドイツ2部)ら主力の若手を大量に放出した東京ヴェルディ。ユースから選手を昇格させることに留まらず、若手を積極起用し、選手としての価値を高めた上で移籍金(違約金)ないし育成費(トレーニングコンペンセーション)で数千万円の収入を得る考え方と手法は真の“育成型クラブ”になりえる存在だ。
ある代理人は、開幕前に東京∨のフロントから「5名ほどの選手を売って最低このくらいの利益を上げたい。それがうちのスタイル」という話を聞かされたという。
東京∨の手法で興味深いのは、「トレーニングコンペンセーション(以下、TC)」と呼ばれる育成費による収益構造を計算している点。2011年に高木善朗がオランダのユトレヒトに移籍した際、報道では「移籍金5000万円」という数字が出ていたが、当時の年齢と実力、そして金額を見ればその大半がTCによる金額あったと推測される。
FIFAでは移籍規則において、23歳以下の選手が移籍する際、その選手が12歳から21歳までプレーしたクラブ、選手を育成したクラブに対して、移籍先クラブが育成金としてTCを支払うことを義務付けている。
ジュニアユースから東京∨でプレーしている高木の場合、19歳でオランダ1部のユトレヒトに移籍したことで12歳から19歳までの7年分のTCを請求できる。詳しい計算式は省略するが、算出すると39万ユーロ(約4800万円)のTCとなる。
当然ながら日本国内の移籍においてもTCは発生するが、移籍金制度が2009年シーズンからFIFAルールに移行したのに対して、TC制度は選手会の反対を押し切って日本サッカー協会とJリーグが日本独自、Jクラブを過剰に守るようなローカルルールを作った。
そのため日本には、アマチュア選手がプロ選手として移籍する場合の「トレーニング費用」とプロ選手がプロ選手として移籍する場合の「トレーニングコンペンセーション」という2つの育成補償金制度が存在する。