人生初の右サイド起用。対峙したのはビジャ
「もう自分のことで手一杯でしたから」
そうやってプロ3年目で初めて立ったJ1の舞台での90分間を振り返りながら、発せられる言葉からは充実ぶりがにじみ出てくる。セレッソ大阪の舩木翔は、22日に行われた2019シーズンのJ1開幕戦、ヴィッセル神戸戦でJ1初出場を果たし1-0の勝利に貢献した。
小学生時代からセレッソ一筋の舩木は、精度の高い左足キックや攻撃力を買われて2017年にトップチーム昇格を勝ち取った。しかし、プロ3年目の開幕戦でミゲル・アンヘル・ロティーナ監督によって与えられたポジションは、まさかの右ウィングバック。人生初の「逆サイド」でJ1デビュー戦に臨み、対峙したのはスペイン代表歴代最多得点記録を持つダビド・ビジャだった。
「いつもやっているポジションとは逆の右サイドで、やっぱり今までやったことがなかったので難しいところもありました。前半はプレッシャーと緊張もあり、あまりうまく自分では(ゲームを)作ることができなかったし、その中でプレッシャーを受けていないのにプレッシャーを感じている自分もいました」
前半の舩木は確かに持ち味を存分に活かせたとは言えなかった。ボールを握る神戸に押し込まれて最終ラインに吸収され、目の前のビジャにはカットインで何度もかわされる。辛抱強く耐えてはいたが、「厳しいか…」と思わされる瞬間もあった。
しかし、後半に潮目が大きく変わる。「右利きじゃなくて左利きにしかできない、そういうプレーは何回かできた」と本人も手応えを感じていた。前半は「自分は前に行くのが特徴だし、そこで前に行けなくなったら終わり。ビジャ選手がずっと前に残って自分を引きつけるというか、注意を逸らさせて、うまく向こうは守備をしないで、後ろはどんどん下がらされたりとかもしていた」。
そこから隣にいたセンターバックの山下達也らとコミュニケーションを取って、後半からポジションを修正。セレッソがボールを持っている時は思い切って高い位置をとり、守備に戻らないビジャを背後に“捨てる”形で攻撃に出ていくことで、より効果的に周囲と連動できるようになった。
舩木は「もう少し自分も駆け引きをした中で、相手選手を下げることができればカウンターのチャンスも減ったし、もっと自分のポジション取りが大事なのかなと思いました」と、正しいポジショニングの大切さを痛感した。これこそがまさにロティーナ監督の志向するサッカーの重要な側面だ。