中村憲剛が唸った豪快な初ゴール
Jリーグでは1993年の開幕以降、数々の外国人選手たちが輝かしい功績を残してきた。中でもブラジル人選手たちの存在感は際立つ。
過去にはエメルソンやワシントン、マグノ・アウベス、アラウージョ、ジュニーニョ、マルキーニョスといった名ストライカーたちが得点王として歴史に名を刻み、ジーコをはじめジョルジーニョやレオナルド、セザール・サンパイオ、ジーニョ、フランサらブラジル代表経験のある名手たちも躍動した。
最近では昨年、ブラジル代表として2014年のワールドカップにも出場したジョーが名古屋グランパスに加入し、得点王を獲得してその名を轟かせた。そして今年、また新たにブラジルでかつてネイマールに匹敵する至宝と称されたストライカーが日本でのプレーを決断した。
川崎フロンターレに加入したレアンドロ・ダミアンは、ブラジルのA代表で18試合の出場歴を持ち、ネイマールやオスカル、マルセロ、アレシャンドレ・パトらとともに出場した2012年のロンドン五輪では準優勝ながら得点王に輝いた実績を持つストライカーだ。
少年時代はサンパウロ州のスラム街でアマチュアとしてプレーし、17歳までプロクラブの下部組織に在籍した経験がなかったという逸話も知られる。その後は無名のクラブでの下積みを経て、インテルナシオナルやサントス、グレミオ、フラメンゴ、クルゼイロといったブラジル国内の名門を渡り歩いた。欧州挑戦は失敗に終わったものの、2016年には半年間だけスペインのベティスにも在籍したことがある。
昨年はサントスからのレンタルで飛躍のきっかけを掴んだインテルナシオナルに復帰し、ブラジル全国選手権で10得点を挙げた。近年は度重なる負傷に悩まされてきたレアンドロ・ダミアンだが、7年ぶりのリーグ戦二桁得点を達成し、今年は新天地の日本で完全復活を目指す。
今季のJ1開幕を1週間後に控えた16日、FUJI XEROX SUPER CUP 2019で、早くも秘められし力が解き放たれた。後半開始からそれほど経っていなかった52分、左サイドからのクロスを自慢のヘディングで落とすと、中村憲剛が処理しそこねたボールを左足のダイレクトボレーシュートでゴールネットに突き刺す。
レアンドロ・ダミアンは名刺代わりの豪快な一発で、フロンターレにカップ戦の初タイトルをもたらした。浦和レッズとの熱戦を終えた後、中村は目の前で生まれた元セレソンの来日初得点に「うまいですよ。あれはハーフバウンドを左足で、(体を)捻りながらなので、『すげえ』って思いましたよ、単純に」と唸っていた。
5万2000人を超える観客の度肝を抜いた。このゴールを見ただけで、昨年のジョーと同じように来日1年目で得点王争いという期待も膨らむ。いつだったか横浜FCでプレーするFWイバが「フロンターレにいるならストライカーは20得点できなければ失格だよ」と冗談めかして笑っていたのを覚えているが、現J1王者の充実ぶりを見れば、今年は「合格」を与えられるほどの大爆発があるのではないかとワクワクしてしまう。
だが、当の本人は「自分は得点王は特に意識していなくて、最も大切なのはチームがタイトルを獲得すること」とあくまでフォア・ザ・チームの姿勢を貫く。スター選手であることに疑いはないが、「チームに対して自分がフィットするためにどんな要求が必要かというより、2年連続でタイトルを獲得している素晴らしいチームなので、自分がチームにフィットしなければならない」と努めて謙虚なのだ。