イランを「負けさせる」
準決勝で今大会最強の相手と対戦した日本は、これまでで最高のプレーをして3-0と完勝してみせた。ただ、日本のアプローチはこれまでの試合と同じといっていい。
「イタリアは勝てないが、相手がイタリアに負けることはある」
これはヨハン・クライフの言葉だが、今大会の日本も勝つというより相手に負けさせるチームであり、それはイラン戦でも変わらなかった。日本の3ゴールはいずれもイランの自滅であり、得点以外の試合展開も自滅を誘う形になっていた。
ハイクロス、ロングスロー、フォアプレス、ミドルシュート。この4つが連続する展開になればイランのペースである。日本がそれを避けるには、ボールを保持して押し込んでしまったほうが良い。ただ、ポゼッション攻撃は今大会の日本の弱点であり、それ以前にボールを支配して押し込めるかどうかは微妙だった。
「なかなかボールを握るのは難しいと思っていました」と、森保一監督も語っている。「難しい」と考えていたボール支配が可能になったのは、大迫勇也の存在が大きかった。
大迫が隙間受け、南野拓実は裏抜けと役割分担が明確になり、大迫への縦パスでイランの守備バランスを崩せていた。大迫がいなければ、イランを「負けさせる」展開にはできなかったと思う。
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