イラン代表を支える最後の砦
日本代表の守護神・権田修一は、よくこんなことを話している。
「本当に強いチームが勝つのがトーナメントで、『GKが止めて勝ちました』とか、『この試合はGKが…』というのは過去を見ても絶対にある」
「どこの国のどのレベルの大会でも、優勝するためにはGKが絶対に大事なポジションなのは間違いない」
まさにその通りだろう。もちろんAFCアジアカップ2019も例外ではない。勝敗の分かれ目がよりシビアになってくるトーナメントの終盤には、GKの1本のセーブ、1本のキック、1本のスローイン…一度の声かけすらも試合結果を左右するかもしれない。最後の砦であるGKには、ストライカー同様にゴール前で決定的な働きが求められる。
そういった意味で日本代表がアジアカップのタイトルを獲得するにあたって最大の障壁になりうる存在は目の前にいる。それは紛れもなく準決勝の対戦相手、イラン代表のゴールマウスにそびえ立つアリレザ・べイランバンドだ。
192cmという天を衝くような長身を誇る守護神は、昨年のロシアワールドカップで見せた1本のセーブをきっかけに世界中から注目を浴びるようになった。グループリーグ最終戦のポルトガル戦、べイランバンドはクリスティアーノ・ロナウドのPKを見事な読みで止めたのである。
生涯で80%以上の成功率を誇る世界的スーパースターのPKを読み切るという離れ業は、これまでアジア域内、特に中東での知名度しかなかったGKの評価を一変させるのには十分だった。イランはグループリーグ敗退に終わったが、べイランバンドは世界から称賛されて然るべきパフォーマンスを見せた。
もう1つ、彼のパブリックイメージを形成するうえで重要なプレーである驚異的な飛距離を誇るロングスローも、ワールドカップで世界中に認知されたはずだ。ポルトガル戦で見せたような爆発的な強肩は一度だけの偶然ではなく、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)やイラン代表、さらには国内リーグといった日常でも頻繁に披露される。
日本での知名度は、おそらくACL決勝でさらに上がった。イランの強豪ペルセポリスで正守護神を務めるべイランバンドは、もはや代名詞となった70m級のロングスローのみならず、豪快なセービングや正確なキックでも鹿島アントラーズの脅威となった。