「チームが1つの生き物のような感覚で…」
日本代表通算113試合出場を誇る長友佑都ですら「今までにない」と語る展開だったが、彼も含めて全員が「想定内だった」と振り返る。21日に行われたAFCアジアカップ2019の決勝トーナメント1回戦、日本対サウジアラビアは実に不思議な試合だった。
ボール支配率はサウジアラビアが76.3%だったのに対し、日本は23.7%。これは1998年のフランスワールドカップ以降、日本代表が主要国際大会の試合で記録した最低の数字だったという。
さらに興味深いのは、前半の日本のボール支配率は30.7%だったので、90分間で23.7%だったことも考慮すると後半は……。ご想像の通り、試合終了までの45分間のボール支配率は17.3%。もちろんパスの本数でもサウジアラビアに圧倒的な差をつけられた。
後半の45分間、日本が成功させたパスはわずかに39本。平均して1分6秒に一度しかパスが通らない。その間にサウジアラビアは314本のパスを成功させていたので、日本との差は275本。長友に至っては90分間を通して8本しかパスを蹴っていない。もはや笑えてくるようなデータだ。
だが、日本は勝った。
長友は言う。「どんな日程でも、どんな環境でも、勝つチームが強いということです」と。確かにサウジアラビア戦での日本代表は強かった。「今までの日本は自分たちがポゼッションを握れなくて、相手に握られたら、たぶんボロが出ていてやられている」と32歳のベテランサイドバックが言う通り、過去のチームであれば、いわゆる“自分たちのサッカー”を貫いて痛い目に遭っていたかもしれない。
あくまで「勝利」という結果を得ることに徹した戦い方を選び、最後まで貫き通したことが準々決勝への道を切り拓いた。戦術面で得たものは少なかったかもしれないが、緻密な戦略によって勝つことができたと言える試合になった。
柴崎岳も「チームとして戦い方はブレていなかったと思います。1人がはみ出していたシーンもなかったですし、試合を通してチームが1つの生き物のような感覚で、意識も統一できたところは収穫だったと思います」と全員が一丸となって掴み取った勝利に手応えを感じているようだった。