いよいよ始まる「本当のアジアカップ」
通算成績は9勝1分5敗。これは日本代表が21日にAFCアジアカップ2019の決勝トーナメント1回戦で対戦するサウジアラビアとの過去の激闘の記録である。一見すれば分がいい相手のように思えるが、最後の対戦だった2年前のロシアワールドカップ・アジア最終予選の最終戦は0-1で敗れた。
ワールドカップに5度出場し、直近のロシア大会でもグループリーグで1勝2敗と健闘したサウジアラビアはアジア屈指の強豪国に違いない。森保一監督率いる日本代表にとって、中東の盟主に君臨する大国との一戦は大陸王座奪還に向けた大きな山だ。
日本のキャプテン吉田麻也も「次からが本当のアジアカップが始まる」と気を引き締めていたが、決勝トーナメントは負けたら終わり。一瞬の隙も見せてはならない。サウジアラビアは4-1-4-1をベースにボールポゼッションを重視しながら前線のスピードを活かすサッカーでグループリーグは2勝1敗。第3戦でカタールに敗れたものの、ファン・アントニオ・ピッツィ監督の指揮の下、確かな実力を示して勝ち上がってきた。
吉田はサウジアラビア戦に向けて「お互いに監督もチームも変わっていると思うので、前回の試合(2017年の敗戦)を比較材料にするのはちょっと難しい」と述べつつ、「組織的にしっかりしているし、前線にスピードのある選手たちがたくさんいて、裏への飛び出しというのが1つのポイントになる」と分析している。
グループリーグで2得点を挙げているファハド・アル・ムワラッドが、まさに吉田の言う「スピードのある選手」。身長168cmと小柄ながら1トップとして攻撃陣をけん引している。
だが、アル・ムワラッドが1トップとして起用されていることに懸念を示したのはシュアイブ・アフメッド記者だ。UAE生まれで中東サッカーに精通し、英語でサウジアラビアのサッカー情報を発信するウェブサイト『KSA Football Insider』を運営する同氏はサウジアラビア代表における「ストライカーの力不足」を指摘する。
「アル・ムワラッドは本来ウィングの選手。今回、ピッツィ監督が連れてきた純粋なストライカーはモハメッド・アル・サイアリのみで、彼は今大会前までA代表キャップの全くない、もう25歳の選手だ。しかし、彼はサウジアラビアリーグで同国人選手で最も得点を取っている選手。その状況は決して好ましいものではない」