前回スタートを切った育成指導をさぐる旅だが、周知の通りスポーツ指導の現場を取り巻く環境が大きく変わりはじめている。それは他でもない大阪市立桜宮高校や、柔道女子日本代表の事件から端を発するスポーツ指導の現場における体罰、暴力問題だ。すでに第1回の取材が終わった直後から第2回の旅の行き先は決めていたのだが、状況が状況だけに今回は私の、これからの旅の意味と方向性を定める上でもまずはワンクッション置いて「サッカーの指導現場における暴力」の問題について考えてみたい。
日本サッカー協会の暴力根絶に対する決意
日本サッカー協会は2月16日、JFAハウスで各都道府県サッカー協会の責任者らを集めた全国技術委員長会議を開き、「サッカーの指導現場において、今後一切の暴力を根絶する」という方針を伝えた。
会議の冒頭で壇上に上がった大仁邦彌会長は「現在問題になっているスポーツと体罰についても、私たちは他人事ではないと捉えています。日本サッカー協会で40年にわたる指導者育成事業の中で、プレーヤーズファーストの考えを植えつけて参りましたが、それが不十分であったことを認めざるを得ません」と率直な言葉を述べた。
JFA会長が反省の弁に聞こえる言葉を述べることは容易いことではないが、逆にそれによってJFAの暴力根絶に対する強い決意が垣間見えた。
大仁会長の後、挨拶を行った山口隆文・新育成担当技術委員長(2月1日より就任)も、育成のトップとして「大方針として、サッカーの指導現場において、今後一切の暴力を根絶します。暴力を用いた指導を『しない、させない、許さない』ということを宣言したいと思います。しかし、たくましい選手をする上で、時に厳しい指導をすることがあり、この宣言はこれを否定するものではありません。それでも、厳しい指導の中には暴力は一切必要ありませんし、あってはならないものです」と断言した。
最後に登壇したのは、眞藤邦彦指導者養成部会長。眞藤部会長からは、暴力の根絶、「しない、させない、許さない」宣言に向けた具体的な取り組み案についての話があった。
具体的には4つのアクションとなるが、「これから述べる様々なアクションは指導者に対して取り締まりや切り捨てをするものではなく、むしろ指導者をサポートし守るもの、指導者と共に歩んでいくものとして捉えていただければと思います」(眞藤部会長)というものだった。