【前編はこちらから】 | 【サッカー批評issue60】掲載
現状での問題点と建設への反対意見
クラブが声を挙げた最たる例が『START FOR 夢スタジアムHIROSHIMA』をキャッチフレーズにした全国的な署名活動だ。クラブのオフィシャルHPから現在も署名が可能。J1優勝争いの最中、森保監督はじめ選手たちも街頭で署名を呼びかけ、夏頃から三ヶ月で30万人以上を集めた。
広島のサッカー専用スタジアム建設の機運がかつてなく高まっていることは石橋氏も認めるところだ。
では、新スタジアム建設の具体的な動向はどうか。
まず気になる財源だが、石橋氏は「理解があれば問題はない」と言う。「どの自治体も苦しいと思いますが、財政の無駄を省く努力ができれば自治体だけでも十分、広島市だけでも十二分にできると断言できます。あくまで民間の協力やスポーツ振興の助成を利用するのが理想ですが」
財源に問題がなければ、民意はどうか。
11月に地元テレビ局が行ったアンケート調査がある。対象は一般市民250人。まず「スタジアムはほしいですか?」の問いに86%が「ほしい」と回答した。次に「スタジアムをつくる場所は?」の問いに、現在スタジアムの候補地となっている三箇所では、旧市民球場跡地が67%、観音地区が13%、宇品地区が12%、という回答だった。
観音地区や宇品地区といった候補地を実際に訪ねてみたが、それぞれ飛行場跡地、港湾という場所で、市街地から車で20分以上離れた郊外にあった。経済界など利害関係者がスタジアム建設によって再興しようとする狙いがあるエリアなのかもしれない。
石橋氏が、そして多くの市民や広島サポーターが希望するのは、旧市民球場跡地だ。広島市の市街地のど真ん中。街中にサッカー専用スタジアムができたならば――。想像したときの高揚感は肌感覚でおわかりいただけると思う。
ところが、旧市民球場跡地の利用案については、この数年、民意に背くような動きがあった。広島東洋カープの広島市民球場でのラストイヤーが2008年。すぐに当時の秋葉忠利市長時代の広島市が旧市民球場跡地の利用案を策定したが「公園利用」「イベント利用」「(平和を記念する)折鶴保存ホール創設」といった文言が並んだ。この案に対し、跡地にスタジアム建設を求める市民団体が再検討を要求。市の計画は頓挫したまま現在を迎えている。