新指揮官が持ち込んだアタッキングフットボール
J1最終節でセレッソ大阪に敗れた後、日産スタジアムのスタンドからはブーイングが聞こえた。大きなうねりにはならなかったが、ファン・サポーターが少なからず結果に対する不満を抱いているのは確かだ。
今季の横浜F・マリノスは12勝5分17敗、勝ち点41で12位という成績だった。18チーム制になった2005年以降ではクラブ史上最低順位。12位から16位までが同じ勝ち点41で並ぶ大混戦で、もし首位の川崎フロンターレに肉薄する56得点を奪った攻撃力がなければ、ジュビロ磐田ではなくマリノスがJ2クラブとの入れ替え戦に回っていてもおかしくなかった。
アンジェ・ポステコグルー新監督を迎えたことで、チームのスタイルは一変した。これまでのマリノスのイメージといえば、やはり「堅守」。だが今季はボールを動かし続けることで主導権を握る超攻撃的なサッカーに取り組んだ。
リーグ戦での56失点は、その一大転換の結末と言ってしまえばそれまでなのかもしれないが、もっと増えていたかもしれないし、やり方によっては減っていたかもしれない。マリノスにとって、とにかく今季は最適なバランスを見つけるのに苦慮した1年だった。
シーズン序盤はビルドアップ時に中央へ絞る両サイドバックや、極端に高い位置をとるGK、連係の拙い中盤などを標的にされた。試合を重ねるごとに分析が進む中で、その度にポステコグルー監督はチームに少しずつ修正を加えていく。「我々のやるべきことは変わらない」と哲学はブレなかったものの、試行錯誤は繰り返されていた。