チームへの信頼が遠ざけたテレビ観戦
ちょっとというか、かなり意外な言葉が返ってきた。鹿島アントラーズが長く悲願にすえてきた、アジアの頂点を初めて極めた今月11日未明。敵地テヘランのアザディスタジアムで、強敵ペルセポリス(イラン)と戦う盟友たちをどのような形で応援していたのかと、DF内田篤人に聞いた直後だった。
「いや、オレ、見ていないんですよ。試合を」
ホームのカシマサッカースタジアムで3日に行われた、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝のファーストレグで、アントラーズは2-0の快勝を収めた。迎えたセカンドレグのキックオフは、日本時間で日付が変わる11日午前零時。放映権を持つ日本テレビのBSやCSで生中継されていた。
環境が整っていながら、なぜテレビ越しにエールを送らなかったのか。おりしも当時の内田は、左ハムストリングス筋損傷で戦線離脱を強いられていた。だからといって、翌日のリハビリメニューを優先させて体を休めていたわけではない。アントラーズというチームへ寄せる、全幅の信頼がテレビ観戦を遠ざけた。
「まあ、(ファーストレグを)2-0で勝っていたら負けないでしょう。プレーする方はそういう気持ちじゃないと思うけど、見ている方はそんな感じだからね」
終盤戦になって強さを身にまとったチームは、必ずアジア王者になって凱旋してくる。ならばこちらもプロフェッショナルとして、いまやるべきことに全力で取り組む。内田の信頼に応えるように、アントラーズはセカンドレグをしっかりとスコアレスドローで締めて、敵地で歓喜の雄叫びをあげた。