今もドレッドヘアーのダーヴィッツ
ぼくとほぼ同年代のエドガー・ダーヴィッツは、ぼくのごく個人的でささやかなフットボール史に於いて常にコンテンポラリーなフットボーラーだった。それだけに、引退したての(というのも変な言い回しだが)ダーヴィッツを目の当たりにした時は、それなりの感慨がこみ上げてきた。
場所は有楽町の外国人記者クラブ。ここで、スポンサー絡みのイベントの為に来日しているユヴェントスの若き会長、アンドレア・アニェッリとご存知エドガー・ダーヴィッツがそのイベントに先駆け記者会見を行うとのことで、今回はその会見後のインタビュー収録に同席させてもらう幸運に授かったのである。
ジャーナリズムとは無縁の筆者が明らかに不審者のオーラを纏いながら、おずおずと歩を進め、くだんの記者クラブに入ってゆくと、いきなりいたのである、ダーヴィッツが。さすがに見事な男振りだ。
ゴーグルをサングラスに掛け替え、トレードマークのドレッドヘアーもそのままに、ユヴェントスのスーツに身を包んでイタリア人スタッフと思しき女性と通路で立ち話をするエドガー・ダーヴィッツの佇まいは、さながら休息中の戦士といった感じで、ただ、穏やかに会話しているだけなのに、なにやらもの凄いエネルギーが漲っているのである。
ダンディズムとはこういう人の為に用意された言葉なのであろう。やはり男はこうでなくてはいかん、と訳も分からず、一人ただ力強く頷く。そうして、急に文弱の我が身の侘しさが身に沁みる。昔、雑誌の背表紙によく広告が載っていたブルーワーカーってまだ売っているのかな。
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