長友がインテルで学んだこと
「サッカーはメンタルのスポーツだ」とよく言われる。
だがこれは単に「強い気持ち」が重要なだけでなく、相手よりも精神的に優位に立つことが勝利を引き寄せるという意味もある。プレーの質や身体能力の差だけでなく、いかに賢く戦えるか、良好な精神状態を保てるかも勝利への鍵だ。
そこで長友佑都のある言葉が引っかかった。
「もちろんギラギラした自分たちの気持ちを前面に出してプレーするのは大事なんですけど、ピッチに立ったら頭は冷静になる部分は持ってないとね。何でもかんでも突っ込んでボールを奪いにいって、危ないところでファウルを取られて、(セットプレーで)やられるっていう、その1点で勝敗が分かれることがサッカーにはある」
これは3-0で勝利した12日のパナマ戦翌日の囲み取材での発言だった。いわゆる「駆け引き」において、甘い部分があると長友は指摘しようとしている。失点に結びつくことはなかったが、日本はパナマに直接フリーキックを21本も与えてしまった。
百戦錬磨のサイドバックは「高いレベルの選手たち、チームになるとセットプレーからやられる」と忠告する。ただ、フリーキックを与えるようなファウルそのものを否定しているわけではない。時間帯や状況に応じて相手に厳しく寄せて、ボールを奪い切るような守備も求められるし、精神的な駆け引きにおいてもファウルを活用しない手はない。
「南米の選手たちはよく、初めに威圧するじゃないですけど、ガツンといってファウルをして、危険ではない場所でファウルをして、相手にこいつ来るなって思わせると言うか。まあ(ハビエル・)サネッティとか、言ったら(ワルテル・)サムエルとか、(エステバン・)カンビアッソとかは僕がインテルいた時に『まず最初にいけ』と。(イバン・)コルドバもよく言ってましたね。『最初に間を空けるな、最初にいけ』ということはよく言っていて、そういうところも『ずる賢さ』っていうのはやっぱり必要になってきますよね。世界で戦ううえでは」
アルゼンチン代表だったハビエル・サネッティやワルテル・サムエル、エステバン・カンビアッソ、コロンビア代表のイバン・コルドバ。長友が挙げたのは、インテル時代に共にプレーした南米出身の重鎮たちである。
当時のチームには他にブラジル代表の守護神ジュリオ・セーザルや、巨漢DFルッシオ、世界最高峰のサイドバックと称されたマイコン、アルゼンチン代表FWディエゴ・ミリートら、南米出身のベテランが数多く揃い、主力を担っていた。