今号の特集は「Jリーグ20年目の応援論」
本日は『サッカー批評issue61』(双葉社)が発売になりました。特集は「Jリーグ20年目の応援論」と題して、摩訶不思議な生態系を築いているように思える「サポーター」という生き物について検証しています。
表紙には「サポーターは敵か味方か? そのクラブ愛、本当にチームのためになっていますか?」とキャッチコピーを打っていますが、我々が考えたかったことの根幹はその一点にあります。以下、本誌の特集リードから抜粋します。
かつては海外文化の受け売りと揶揄されることもあった日本の応援スタイルですが、いまは世界的にも類のない独自の進化を遂げつつあります。またサポーターの活動がサッカーにとどまらない広がりを見せるなど、Jリーグ20周年を迎えて応援のあり方も多様化しているように感じられます。(中略)
サポーターがJリーグ、日本サッカーの発展に大きく貢献してきたのは間違いありません。しかし、単なる消費者とも言えないサポーターとクラブがどう向き合うか、どう関係を築いていくかは、一筋縄ではいかない奥深いテーマとなっています。クラブを強く愛するがゆえにとった行動が時としてそのクラブの足を引っ張ってしまうことや、一部の過激な言動が波紋を呼んだりすることも、サッカーのサポーターならではの出来事と言えるでしょう。
サポーターとはどういう生き物なのか? サポーターとサッカークラブの幸福な関係とは何なのか? 本誌ではいわゆる概論的、学術的なサポーター論ではなく、サポーターの実態に可能な限り迫ることで20周年を迎えたJリーグの応援文化について考えたいと思います。
というわけで、中身については読んでのお楽しみですので詳しくは触れませんが、選手にスタジアムの応援をどう思っているのか聞いたり、Jクラブサポーターによる座談会を開催したり、サポーターに愛される選手である佐藤由紀彦選手(V・長崎)、北嶋秀朗選手(熊本)、岡山一成選手(前札幌)に話を聞いたりしています。とくにこの3名のインタビューは、取り繕った言葉では伝えられないものばかりで、サポーターの力についてとても考えさせられる内容になっています。
一方でサポーターのネット炎上史や応援タブーの境界についての考察など、光と影の両面からスポットを当てられるよう特集を組みました。
いろいろダラダラと書きましたが、要はクラブとサポーターってもっとうまく付き合えるはずなのに、なぜうまくいかないときが多いのか、というのが特集の出発点になっています。現場で見ていても、もっとうまくサポーターの力を利用し合えばいいのにな、なんて思うことが少なくないからです。
表向き「サポーターの皆様」と言いながら、積極的に向き合おうとしないのは勿体ないことこの上ないです。また、サポーターの行動でも、それが本当にクラブのためになっているのか、疑問に思うこともあります。ただ、それがそう簡単にはいかないからこそ、こういった特集が成立するのだと思いますが…。クラブとサポーターがベッタリの関係になってしまえば、それはそれで別の問題が生じる可能性もありそうです。
いずれにせよ、開幕20年を迎えたJリーグで検証すべきテーマとして、前号では「クラブ社長」、今号では「サポーター」を取り上げさせていただきました。今後のJリーグの発展を考えるうえで、とても大切なテーマだと思っているので、ぜひご一読いただければと思います。
【了】