ソン・フンミンはアジア大会の金メダルを手にしたことで兵役免除の権利も得た【写真:Getty Images】
アジア競技大会は1日に男子サッカーの決勝が行われ、U-21日本代表とU-23韓国代表が対戦。延長戦までもつれた激闘を2-1で制した韓国が、2大会連続となる金メダルを獲得した。
韓国のキャプテンを務めたFWソン・フンミンの、メディアに対する第一声は「言葉にできないほど嬉しい」だった。金メダルを確保したことで、兵役免除の権利を手にした喜びを直接口にすることはなかったが、「国民に感謝している。一緒にプレーしてくれた」とファンへの感謝とともに「今は何も頭に浮かばない」と発言からは安堵感がにじみ出ていた。
「選手たちには『諦めずにやろう』と話してきた。キャプテンとしての僕は本当に物足りなかったと思う。若手がみんな努力して勝ち取った結果だ。本当にありがたい。よく喝を入れてきたが、それをみんなが心に刻んでくれた。だから金メダルが獲れた。チーム一丸となったのが勝因だと思う」
ソン・フンミンは今回の金メダル獲得が、個人の頑張りではなく、あくまでチーム全体の努力の成果だと強調する。
韓国は他にもロシアワールドカップに出場したGKチョ・ヒョヌや、ガンバ大阪で活躍するFWファン・ウィジョをオーバーエイジで起用。さらに前線には欧州でプレーするファン・ヒチャンやイ・スンウといった豪華な面々を揃えていたが、彼らの力だけでなく、チーム全員の献身があっての金メダル獲得だった。
前半から日本ゴールに向かって猛攻を仕掛けた韓国だったが、相手の粘り強い守りを前に攻めあぐね、後半は徐々にトーンダウン。0-0のまま延長戦に突入し、その延長前半で2つのゴールを奪って勝利を確実なものにした。
まさに死闘。そんな一戦を終えたソン・フンミンは「一生忘れられない延長戦になるだろう。サッカー人生の中でこういうこともあるんだな、と思った」と感慨深げに語る。
「このメダルは僕だけのメダルではない。国民と一緒に獲得したメダルだと思っている。僕がこのメダルに貢献しているわけではない。韓国サッカーに携わるみんなが貢献している。このメダルがこれからも影響を及ぼすだろう」
最後に「あなたにとって金メダルとは?」と問われたソン・フンミンは「これは国民のものだ。それに尽きる」と答えた。スタジアムに詰めかけた約1万人の観衆のうち、おそらく9割近くが韓国に声援を送っていた。優勝の背景には、インドネシアでも圧倒的なホームの雰囲気を作り出したファンの姿もあった。
アジアNo.1アタッカーは、サッカー選手としてのキャリアをかけて臨んだアジア大会で、欲しくてたまらなかった優勝を、チームメイト、そして韓国国民とともに見事に勝ち取った。
(取材・文:舩木渉【インドネシア】、翻訳協力:キム・ドンヒョン)
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