メルボルン・ビクトリー移籍は実現するのか
本田圭佑は、ダウンアンダーの地を踏むのか。
日本では、本田圭佑のいわゆる“エア移籍”報道が、すっかり夏の風物詩となっているようだ。そして、その“エア移籍”先の1つに、オーストラリアが挙がるようになってから久しい。そういう報道を現地で目にする度に「ないない」と一笑に付してきたが、どうも今回はそうとも言いきれないようだ。
ロシアワールドカップ後に代表引退を示唆し、選手としての去就に注目が集まる中、「本田圭佑、豪州移籍」がにわかに現実味を帯びてきた。ここ数日の現地報道を見る限りでは、どうやらメルボルン・ビクトリーが移籍先候補の“ホット・フェイバリット”になっているようだ。
当然、交渉の一方の当事者が明言している以上は、話が進んでいるのは間違いなく、今の状況を「新聞人事」と片付けてしまうのは危険だ。しかし、この手の話は本当に結果が出るまでは確証を持てない。だから、ここではあくまでも現在進行形かつ未確定であるという前提を崩さず話を進めていくことにしたい。
思い起こせば、本田が、イタリアでのキャリアを終えメキシコに移ったのも昨年の今頃だった。当時の本田には、ワールドカップを控えて継続的な活躍の舞台が必要という選手としての立場と同時に、「本田圭佑」というブランド戦略上の意図が、移籍先選びに大きく作用したはずだ。これは筆者の推測の域は出ないが、メキシコという選択肢の意外さの裏には「その先には、アメリカ、MLS」という戦略的なビジョンがあったように思う。
実際、多くのスター選手がキャリアの黄昏時、時にはそれを待たずに移籍してくるメジャーリーグ・サッカー(MLS)は、リーグ全体の盛り上がり、市場規模や注目度などを考えても、本田にはうってつけの移籍先だ。
何よりも、本田側が少なからず気にするであろう「都落ち」感がまったくない。レベル的にも低くはなく、世界最大のマーケットであるアメリカ経済に触れることは、将来、実業家を目指すことを公言しているフットボーラー自身にも大いに刺激となったに違いない。その意味で、選手の安定供給源であるメキシコで存在感を示してからのMLS入り、すなわち「メキシコ経由アメリカ行き」を本田サイドは少なからず意図していたはずだ。