順応の速さ
ラウンド16で2ゴールしたキリアン・エムバペは新世代のスーパースター候補だ。アルゼンチン戦の前半11分にPKを獲得したドリブル突破のスピードは世界中を驚嘆させたに違いない。1998年大会でのマイケル・オーウェンを思い出させる高速ドリブルだった。
ASモナコで彗星のように現れ、1シーズンでエース格に。次のシーズンには開幕直後にパリ・サンジェルマンへ移籍した。モナコではラダメル・ファルカオとの2トップで、エムバペは左側を中心にプレーしていた。PSGはネイマールが左ウイングにいるので、エムバペは右へ回された。慣れないポジションでどうかと思ったが、たちまち順応してフランス代表でも右サイドを担当している。
よく比較されるティエリ・アンリも左サイドが得意だが、1998年大会では右でプレーしていたこともある。アンリ、エムバペはともに十代で代表入りした逸材だが、実績のある先輩プレーヤーがいたためにポジションを変えたわけだ。ただ、当時のアンリよりもエムバペのほうが上手く順応していると思う。
PSGではネイマール、カバーニがいる。エムバペもある程度は遠慮しなければならないところもある。しかし、逆に2人へのパスを覚えてプレーの幅を広げた。スピードが印象的だけれども、柔らかいキックやスルーパスもエムバペの武器になっている。足も速いが成長も早い。
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