柴崎岳はベルギーの中盤にできるスペースを有効活用できるか【写真:Getty Images】
日本代表は現地時間2日、ロシアワールドカップの決勝トーナメント1回戦でベルギー代表と対戦する。
FIFAランキング3位の強豪に挑む、日本にとっては厳しい展開が予想される一戦。ベルギーには昨年11月の対戦で敗れているが、彼らに付け入る隙はないのだろうか。
世界中でサッカーチームや選手のスカウティングに活用されているサービス『Wyscout』でベルギー代表のワールドカップでの戦いぶりを分析すると、その特徴がよく見えてきた。
グループリーグ最終戦のイングランド戦ではスタメンを大きく入れ替えたベルギーだが、日本戦では初戦のパナマ戦や第2戦のチュニジア戦に近いメンバーが起用されると見られている。本気のメンバー構成での戦い方を予測するため、今回は第2戦までのデータを用いた。
この2試合で記録されたベルギーの選手たちの「平均ポジション」の図を重ねて比較すると、日本が活用できるかもしれない「4つのスペース」が浮かび上がってきた。
まず1つ目は、多くの識者によっても指摘されているベルギーの左ウィングバック、ヤニック・カラスコの背後のスペースである。展開に限らずかなり高い位置をとる背番号11はもともとウィングとしての攻撃力に特化した選手で、守備を不得手としている。
そのため背後のスペースを使われた際の対応が遅れがちになる点は見逃せない。日本の右サイド、酒井宏樹や原口元気らはカラスコの攻撃的姿勢に押されることなく、その後ろを積極的に突いていきたい。
2つ目は最終ラインの前、2人のセントラルMFの背後にできる広大なスペースだ。日本戦でも先発出場が予想されるケビン・デ・ブライネとアクセル・ヴィツェルは攻撃面に特徴のある選手で、展開にかかわらず前がかりになる。
一方、トビー・アルデルヴァイレルトやヤン・フェルトンゲン、デドリック・ボヤタ(日本戦ではヴァンサン・コンパニ復帰の可能性もある)で構成される最終ラインは、展開によって明らかに高さが変わる。
終始押し込んでいた初戦のパナマ戦では、試合を通じてハーフウェーライン付近に最終ラインを設定していたが、オープンな展開になった第2戦のチュニジア戦では、攻撃陣が前の試合とほぼ同じ立ち位置をとるのに対し、3バックがかなり引いた位置に最終ラインを形成した。これによって2人のセントラルMFの背後には広大なスペースが生まれ、チュニジアの選手たちもそこを活用していた。
日本ではFWの大迫勇也や、トップ下の香川真司らが中央のスペースを使ってボールを収められれば、攻撃でも守備でも大きな貢献が期待できる。前線の中央でボールの収まりが良いと、チーム全体の好パフォーマンスにつながることはコロンビア戦やセネガル戦で証明されている。
そして3つ目と4つ目はエデン・アザールとドリース・メルテンスの背後、左右対になるスペースである。ここは日本が最終ラインでボールを奪った後、センターバックがビルドアップに使うか、セントラルMFの柴崎岳や長谷部誠が後ろからボールを引き出し、攻撃のスイッチを入れるために使うことができる。
ベルギーは右ウィングバックのトマ・ムニエがチーム全体のバランスをとっており、押せ押せだった初戦のパナマ戦ではカラスコと同じように常に攻撃的に振る舞ったが、2失点したチュニジア戦ではよりバランス重視にシフトし、平均ポジションも10m近く下がった。
ただ、2シャドーのE・アザールとメルテンスが1トップのルカクの近くでプレーしようとすることや、ヴィツェルとデ・ブライネがどんどん中央に入っていく傾向もあるため、彼らの背後や横にスペースを作りがちになる。
日本はゲームメイクの起点にできるE・アザールやメルテンスの背後のスペースを活用できるだろうか。そこから右サイド(ベルギーから見て左サイド)のカラスコの後ろに大きく展開したり、センターバックと2人のセントラルMFの間にできるスペースに大迫や香川が入ったり、ポストプレーを使って全体を押し上げたりすることもできる。強豪ベルギー攻略のヒントになりそうな要素は、相手の組織が作り出すスペースにこそ転がっている。
(データ提供:Wyscout)
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