躍進のカギとなった栄養士・坂元美子さんとは?
鵬翔高校が宮崎県勢として初優勝を飾った第91回の全国高校サッカー選手権。PK戦の末に準優勝で幕を閉じたものの、京都橘高校の戦いぶりは賞賛に値するものだった。
得点王を分けあった仙頭啓矢と小屋松知哉の2トップは対戦相手の脅威となったが、素早い攻守の切り替えやサイドMFの飛び出しなど、前線からDFライン、GKにいたるまで機動力に溢れる組織的なサッカーが、躍進のベースになっていた。
そうしたスタイルは限られた練習環境の中、米澤一成監督の指導のもと、日々の練習で培われたことは間違いないが、選手権を通してチームのパフォーマンスを影から支えたのが栄養面の工夫だ。なぜ彼らはトーナメントを通して質の高いサッカーを実現できたのか。そして80分、決勝では延長を含む110分を走り抜くことができたのだろうか。彼らの栄養指導を担当した坂元美子さんを訪ね、その秘訣について聞いた。
――坂元さんは神戸女子大の准教授として教鞭を取りながら、様々なチームの栄養指導をされているそうですが、京都橘高校サッカー部の栄養面を見る様になった経緯を教えてください。
「プロ野球のオリックスで専属の栄養管理士として3年ほど働いていて、その後は履正社医療スポーツ専門学校でスポーツ栄養学を教えながら、色々なチームの栄養指導をさせていただいたのですが、中野克哉選手が中学校時代に所属していたYF NARATESOROの監督さんと奥さんが、京都橘高校サッカー部の米澤一成監督と知り合いだったので紹介していただいたのがきっかけです。
もともとチームにビッタリ付くということではなく、まずは新チームの立ち上げの時に、選手と保護者の方々に栄養講習を行い、神戸女子大学スポーツ栄養ゼミで体脂肪率、身長、体重、ヘモグロビンの数値を測り、そのデータをもとにその後の成長を見るということで、ゼミ生にも手伝ってもらい、部員全員のデータを取りました。それからご父兄を対象に食事調査も行って、個々にアドバイスの回答をするなどしていました。
選手権の本大会に向けては12月22日から24日の3日間の合宿に帯同する形で、食事の栄養管理や指導を行いました。大会中も1月1日から5日まで付いていましたが、そこでいったん関西に帰ってから準決勝と決勝の前に戻り、決勝が雪で順延になったため、また帰って戻ってきました。
帰っている間にも選手の体調は確認して、ストレスを感じていると思うのでこういうものを摂りましょうとか、怪我をしている子のための効果的な食事などを伝えていました」