香川が持つ「潜れる」才能

　日本サッカー史上でも最も才能に恵まれたアタッカーの1人であり、日本選手らしい特徴の持ち主でもある。

　香川真司の強みは敵の間に「潜れる」ところ。DFとDFの間、DFとMFの間に潜り込んで仕事をする。中央でパスを受けるとき、DFの前に立ってしまうと背後に貼りつかれてシュートは打てない。DFの背後にいればオフサイドになる。そうなると、いるべき場所はDFとDFの間だ。香川は味方がボールをリリースできる瞬間に、DFとDFの間に潜り込むのが上手い。

　DFの間でパスを受けた香川は、2人に挟まれながらハーフターンで裏へ抜け出す。このときのコントロールと敏捷性が独特だ。相手は2人いるわけだが、どちらにボールをさらしながらターンしたらいいか、どちらを背負ってどちらをやっつけるか、瞬間的に判断してすり抜ける。相手は2人いるのにどちらも反応できず、お見合いのようになってしまうこともある。

　正確なボールコントロールと俊敏性はおよそ日本人アタッカーに共通する特徴で、香川には加えて瞬間のインスピレーションがある。タックルの足が伸びてくればその上を通すし、GKが前へ出ている状況と思えばループシュートでタイミングを外す…。最後の最後まで敵の意図を察知して裏をつくアイデアは繊細で巧み、そこも小細工好きの日本人には共感できるだろう。