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大島僚太が受け継ぐ系譜。日本の新たなマエストロ、サッカーの原理を知る和製イニエスタ【西部の目/ロシアW杯】

 日本代表は、監督が代わるたびにサッカーのスタイルも大きく変化する。しかし、どの時代も変わらぬものもある。それが、マエストロの存在だ。中村憲剛、中村俊輔、遠藤保仁らは日本のサッカーにリズムをもたらしてきた。偉大な先人が名を連ねるその系譜に、大島も加われる可能性がある。ボールを失わない彼のプレーの真髄とは。(文・西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

ボールを奪いに来る相手を無力化

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大島僚太【写真:Getty Images】

 川崎フロンターレのスカウトとして大島僚太を見出した静岡学園の先輩、向島建の身長は161cm。大島は168cm。小柄な選手のハンデと利点、その両方を知る、身長への偏見のない向島だからこそ大島を見出せたのかもしれない。

 ボールはだいたい下にある。ボールが地面にある限り、身長の低さはサッカーで不利にはならない。むしろ長所なのは歴代スーパースターを見ればわかる。リオネル・メッシ、ディエゴ・マラドーナ、ペレ、プスカシュ、ディステファノ・・・180cm以上のスーパースターなんてあまりいないのだ。彼らに共通するのはパーフェクトなボールスキルと“三歩の速さ”、そしてインテリジェンスだった。

 大島は初速の速い選手ではあるが、図抜けて速いわけではない。スーパースターの要件が1つ欠けている。その点でアンドレス・イニエスタに似たタイプなのだと思う。少し乱暴な言い方をすれば、イニエスタは“速くないメッシ”だからだ。

 絶対的な要件であるボールコントロールは条件を満たしているかもしれない。大島は完璧にボールを止められ、ボールと一緒に体も止められる。逆にボールを動かし、体を動かすこともできる。ボールと一緒に止まれて動ける。

 つまり、大島のボールを奪おうとする相手が動いていれば止まり、止まれば動くことができる。この単純な原理で、大島は誰からもボールを奪われない。もちろんミスはあるけれども、これをやられたら身長差もリーチの差も速さも、全部無効にできるからだ。

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