全員の心を支えた闘争心
「ずっと犠牲やん」
後半29分に原口元気と代わってベンチに下がった時、岡崎慎司は開口一番、こう言った。
12日の2018年ロシアワールドカップ前最後のテストマッチ・パラグアイ戦(インスブルック)での74分間で背番号9が見せた仕事はそれほど献身的かつ泥臭いものだった。
2017年9月の最終予選最終戦・サウジアラビア戦(ジェッダ)以来の代表1トップに陣取った岡崎に課せられた最重要テーマは、プレスのスイッチをどう入れるかであった。
西野朗監督率いる新体制2戦目となった8日のスイス戦(ルガーノ)で「前から行くべきか後ろに引いて守るべきかの判断が曖昧になっている」という課題が出て以来、選手たちはそのメリハリをどうつけるのかを徹底的に話し合ってきたからだ。
ただ、その統率役だった長谷部誠と吉田麻也はベンチスタート。影響力のある本田圭佑も外からゲームを見守る立場にいる。キャプテンマークを巻いたのは山口蛍ではあったが、やはりこの日最年長の岡崎に託される役割は大きかった。
「相手ボランチを見ながら、センターバックに(プレスに)行って、サイドバックにボールを出されても、ボランチを見ながら戻るというのはレスターでもやってきたこと。相手にどれだけ嫌なプレーをするかということに対しては意気込みがある」と本人も語気を強めたように、最前線に陣取った背番号9は頭から相手を追い回し、積極果敢にプレッシャーをかけにいった。
トップ下の香川真司、サイドの武藤嘉紀、乾貴士もそれに連動して相手を追い詰めていく。したたかな南米勢のパラグアイはなかなか高い位置でボールを奪わせてはくれなかったが、それでも諦めずに走り続けるのがこの男の真骨頂。前半0-1でリードされていても、全員の心が折れなかったのは、32歳のベテランがそれだけの闘争心を全身で表現していたからだろう。